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怠惰さを「1ミリ」変えれば、勉強は続く

2018年01月15日 公開
2023年03月23日 更新

坪田信貴(坪田塾塾長/「ビリギャル」著者)

あなたが一生かけて続けたいことは何ですか?

 以上、「日々の継続」のコツをお話ししてきました。

 この小さな継続の先に、「一生をかけて学ぶ姿勢」が形成されます。皆さんが、一生かけて追い求めたいテーマはなんですか?それは、社会人として「いかにいい仕事をしていくか」という問いでもあるはずです。

 僕は、「いい仕事」の条件は以下の3つだと考えます。❶「ワクワクできること」❷「儲かること」❸「社会貢献になること」。

 これを踏まえて、さらに考えてみましょう。このうちの「2つしかない状況」を見て、「どうしたら3つ揃うか」を考えることは、学びとビジネス創出のチャンスになります。

 たとえばある人が、「『引きこもりゼロ』の世の中」を切望したとします。この場合、ワクワク感と社会貢献の要素は揃っていても、儲かるノウハウはまだありません。ならばその人は、それを見つけるために背景を調査し、事例を探し、専門家に聞くことになります。つまり、そこから学びが始まるのです。

 この3つのうち、最終目的になるのは「社会貢献」です。ワクワクは原動力であり、金銭は継続の手段。この2つを通じて実現する究極の目的こそが社会への貢献です。もしあなたが、「自分さえ成功すればいい」と思っているとしたら、むしろ成功の機会を逸する恐れがあります。

 僕は学生時代を「個人主義の国」と言われるアメリカで過ごしましたが、あの国で学んだのはむしろ、「経済合理性を追求すると個人主義では駄目」ということでした。自分の成功のみを考える個人も企業も、意外に早く限界を迎えるのです。ライバルを蹴落とすような人や組織は、信用されないからです。

 対して、一生成功し続ける人は「人のために」働く意識を持っています。だからこそその人の周りには多くのファンや協力者が集い、結果として偉大なことを達成できるのです。「他者実現」は自分の成長につながる

 これは、連載を通じてお話ししてきた「個人の成長」の究極目標でもあります。

 成長というテーマを考えるうえで、よく引用されるのが「マズローの欲求5段階説」。人間の欲求は「生存」から始まり、それが満たされれば「安全」、つぎに「所属」……というふうに、成長とともにレベルを上げていき、その最高レベルが「自己実現」である、という説です。

 この最上部まで上った人は、「他者実現」を目指し始めるのではないでしょうか。

 僕自身も、教育に携わることに幸福を感じ、その意味では自己実現を日々果たしていますが、それは決して「ゴール」ではなく、今も、挑戦の途上です。人の自己実現をサポートしたいと願い、そのために必要な知識を得るべく学び続けています。

 しかし、実は僕自身も塾講師になるまでは「自分が一番でいたい」タイプでした。自分の能力を高めることにしか興味を持ちませんでした。そんな僕でも、この仕事について「人の夢をかなえる」ことで、自分も成長できたのです。

 現時点で「自分のため」しか考えられない人も、今はそれでいいと思います。しかし、物事を学ぶときや仕事をするときに「これを誰のために役立てられるか」と考えることだけは忘れないようにしましょう。成長の階段を上るたびに、大きく、しかも明確なイメージを持ち始めるはずです。

 それが皆さん一人ひとりの人生と、この世の中をもっと良いものにしていく未来を、願ってやみません。

 

『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』

 

『THE21』2017年12月号より

取材構成 林 加愛

著者紹介

坪田信貴(つぼた・のぶたか)

学習塾「坪田塾」塾長

心理学を駆使した学習法により、1,300人以上の子供を個別指導し、多くの生徒の偏差値を短期間で急上昇させた実績を持つ。2013年、著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)が大ヒット。その後も受験指導のみならず、企業の人材教育や起業アイデアの指導、講演活動等多角的に活躍中。

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