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アフリカに突如現れた「ドイツ流お役所仕事」(ナミビア)

2017年11月08日 公開
2018年01月05日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(27)石澤義裕(デザイナー)

ワイロはないが、罰金はある

昨年から走り抜けてきた西アフリカは、賄賂ときどき恐喝。たまに詐欺、の3本柱。

一方ナミビアは、ドイツを見習っているだけに謹厳実直です。

「賄賂を要求する警察官なんか、ひとりもいないっ!」

その辺のおじさんが威張るほど、お堅いのです。

ドライブの初日、町外れの検問で停められました。

「ちょっと、こっちへ来なさい」

そこに座りなさい。どこから来たんだ?

どこに泊まっているんだ?

どこへ行くんだ?

名前は?

仕事は?

車のナンバーは?

一片の笑みも浮かべず、友愛のない質問を繰り返し、いちいちメモします。

精一杯愛想よく応えますが、警察官の言葉には一本の感情線もなく、目が合っても視線が絡まぬガラスの瞳孔。

「400」という数字を書いて指さし、「警察署か、郵便局で払いなさい」

賄賂かと驚いたら、罰金でした!

 

原子レベルで無駄のない警察官の仕事

罪状は、フロントガラスのヒビ。

あ、あのですね、おまわりさん。たかがガラスのヒビで罰金なんて聞いたことがないです。自慢じゃないけれど、このヒビを晒して30カ国ぐらい走ってるんです、2年前から、世界中を。なんぼ道路交通法に書いてあったとしても、ここはアフリカじゃないですか。逆走は普通だし、赤信号だって渡れるし、事故ったって、んじゃそういうことでってハイタッチで別れるくらい大らかさな君たちじゃないですか。なんだったらタイヤが足りなくても走ってそうな勢いじゃないですか。

勘弁してくださいっ!

渾身の平身低頭は華麗に黙殺され、面会終了と相成ります。

思えばこのおまわりさん、「官」としては最高級の仕事でした。

ひと言も世間話をせず、被疑者であることを気づかせないほど淀みない取り調べ。

灼熱の太陽を浴びていながら、コンマ1度も温もりを感じさせず、淡々と調書をとる姿の美しいこと。びた一文、耳を傾けない陳情。

電子レベルで無駄のないお役所仕事です。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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