2017年10月10日 公開
2023年01月12日 更新
こうした細かい資料を作っている会社は他にもあるかもしれない。だが、それが死蔵されてしまっては意味がない。
無印良品では、業務基準書は3カ月に1回、MUJIGRAMは1カ月に1回、更新するのがルール。それらは、必要に応じて常に生まれ変わる、まさに“生きた資料”ともいえる。
「マニュアルは決して固定化させてはいけません。世の中の変化や、社員たちの『もっとこうすべき』というアイデアに応じて変更し続けてこそ有用性が継続されます。組織のベストプラクティスを絶えず見える化して標準化させるPDCAが必須です」
このPDCAを支えるのは、社員自身による変更提案だ。
「社員や店舗スタッフは随時、イントラネットに提案を書き込めるようになっています。その画面には『現在の問題点』と『それに基づく改善策』を書く欄があり、店舗を統括する課長がそれらを吟味して良いと思ったものを本部に送ります。そこで提案が通れば改訂へ。従業員自身が、業務改善の担い手なのです」
PDCAを回していくため、毎回多くの提案が出るよう促すことも大切だ。
「仕組みというものは、時が経てば慣れによって有名無実化し、元の木阿弥になりがちです。提案強化月間を設けたり、良い提案に表彰や昇給などで応えたりと、モチベーションを高める仕掛けは欠かせません」
紙を手元に置かない、という決まり事についても「元の木阿弥」を防止する仕組みを作っている。
「月に一度、『書類を捨てる日』を設けました。どれほど絞り込んでも、いつしか紙は増えるもの。実際、書類の廃棄日は毎回、本社だけでもトラック2台分の書類が出ていました」
定期的にこうした機会を持つことで、「ムダ資料」を作らない意識がそのつど喚起される。
「資料の作り方、使い方、維持の仕組み──これらは私が会長を退いた今も継続され、ムダなく、ブレることなく業務を実行する礎となっています」
≪取材・構成:林 加愛 写真撮影:長谷川博一≫
≪『THE21』2017年11月号より≫
更新:11月25日 00:05