2017年09月19日 公開
2023年03月23日 更新
また、頑張ってわかろうと読み始めても、その頑張りはほとんど続きません。
たとえば、最初からキッチリ理解しようと、ワーキングメモリがフリーズしているような状態でも頑張って読み続けると、どこかでその頑張りはきかなくなります。
なぜなら、「頑張る力」は筋肉のようなもので、使っているとだんだんと疲れて頑張れなくなることが、最近の研究結果からわかってきているのです。
この「頑張る力」は「ウィルパワー」(意志力)と呼ばれて、研究が進められ、その性質がだんだんと明らかになっています。たとえば、「何かを食べるのを我慢した人は、我慢しなかった人に比べて、その後に与えられた課題への取り組みができなくなる」という実験結果が出ています。
「何かに頑張ると、頑張れなくなる」のです。
この「ウィルパワー」は何かを粘り強く続けることや、何かを選んで決める意思決定にも消費されることがわかっています。成功するかしないかも、このウィルパワーの使い方、鍛え方の違いが大きく影響しているのではないかと考えられているのです。
このように限られた資源ともいえる「ウィルパワー」。できるだけ、頑張らずにムダ遣いしないことが重要です。つまり、頑張らなくてもできるような仕組みを活用して「ウィルパワー」を節約し、ここぞというときに使えるようにすることが大事なのです。
これは読書においても同じです。読書は陸上競技にたとえれば、100m競争のような短距離走ではありません。マラソンとまではいかないにしても、一瞬の頑張りでなんとかなるものではありません。このため、最初から頑張らないで、「ウィルパワー」を節約することです。
頑張らないで「飛ばし読み」をしながら、「繰り返し読み」することが、「ウィルパワーを節約し、集中し続ける読み方なのです。
あなたはこれまで、「読書」は前から順番に読むもの、わからないところは飛ばさずにわかろうとして頑張って読むものと思ってきたかもしれません。
小学校で学校の教科書や物語を読んだりするときには、当然のようにそう読んできたでしょうし、そう読むのが当然と思ってきたでしょう。「じっくり&ゆっくり読み」が身体に染み付いているのです。
しかし、「ワーキングメモリ」や「ウィルパワー」といった、われわれの脳を効果的に活用して読もうとすると、これまでの読み方とは真逆ともいえる「飛ばし&繰り返し読み」が実は正解なのです。
特に、物語や小説など、前から順番に読むように書かれたものではなく、ビジネス書や新書、専門書など、知識を体系的に整理して書かれた本は、そうやって読むことがその構造に沿った読み方で、わかりやすく理解できるのです。
そして、この「飛ばし&繰り返し読み」をしてみると、この読み方は本、とりわけ「紙の本」が持つ形を有効に活用する読み方であることに気づくでしょう。
本にはそのタイトル、サブタイトルはもちろん、章タイトル、節見出し、小見出しなどがついており、それをまとめた目次もあります。飛ばし読みはこのタイトル、見出しを有効活用する読み方といえます。
また、パラパラとめくれば、普通の本であれば1分もかからずにめくることができます。そして、前に行ったり、後ろに行ったり、目次に戻ったり自由自在です。
つまり、「紙の本」というのは「飛ばし&繰り返し読み」に適した形であり、「飛ばし&繰り返し読み」によって初めて、紙の本の持つ可能性をフルに発揮できるのです。
もっと知りたい人は……
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更新:11月25日 00:05