2017年09月02日 公開
2017年09月02日 更新
「マンションを買う」というと、一般的には家庭を持ってからの話と思われがちだ。だが最近、シングルで自分が住むための実需用マンションを買う20〜40代が増えているという。その背景には「若いうちに不動産を手に入れたほうがリスクが低い」という現実と、シングル向けマンションの「進化」があった。業界を知り尽くす住宅コンサルタントの野中清志氏と、シングル向けマンションの世界に革命をもたらし、業績を急拡大しているフィードの中村建治社長に、「シングルこそ実需用マンションを買う理由」を語っていただいた。
野中 中村社長が率いるフィードでは、シングル世帯に特化したユニークなマンションを提供し業績を拡大されていますね。
中村 はい、おかげさまで不動産事業を始めて6年、今では年間200〜300戸を販売するなど、手ごたえを感じています。
野中 業界に先駆けていち早くシングル世帯に着目したことは、まさに先見の明だと思います。というのもここ数年、世帯がどんどんコンパクトになっており、40~50㎡のシングル向け物件のニーズが急速に高まっているからです。一方、ファミリー向け、とくに4~5人世帯に向けた80~90㎡のニーズが減っています。
中村 確かに今は、「マンションと言えば3LDK」という常識はなくなりつつありますね。
野中 少し前まで、マンションに占めるシングル向け物件の割合は全体の15%ほどでした。これが今は20%以上と急速に拡大しています。
中村 当社が事業を展開している一都三県はとくにその傾向が強く、人口3600万人に対して1600万世帯。一世帯平均2.2人です。これが都内に限ると平均1.99と、二人を切る。ただ、大手デベロッパーはあまりこの分野を手がけていませんでした。そこで業界に先駆けて、当社が40㎡・1LDKというコンパクトマンション販売に特化させる不動産事業を発足させました。
野中 晩婚化や生涯未婚率の上昇はもちろん、離婚等でシングルに戻る人もいますし、子供を持たない夫婦も増えていますからね。御社の顧客はどんな方が多いのですか。
中村 年齢で言えば20~40代のビジネスマンが中心で、平均年収は500万円ほど。優良企業に勤める、非常に堅実な方が多い印象ですね。将来のリスクをヘッジする方法についても、真剣に考えていらっしゃる。
野中 非常に納得できますね。というのは、私はずっと「シングルこそ不動産を買うべき」と主張してきたからです。人生における最大のリスクは、「老後に住む家がない」「定年後にローンが山ほど残っている」こと。そうなったら悲惨です。それにローンは若ければ若いほど長期で組むことが可能になり、毎月の返済額も少なくて済む。
中村 今、東京二十三区のワンルーム等の平均賃料が約8万円です。3000万円のローンを35年払いで組んでも、毎月の支払いはそう変わりません。にもかかわらず、賃貸よりも倍近い広さの部屋に住むことができる。しかも、ローンを払い終えればその物件は完全に自分のものとなります。
野中 そう、そこが重要です。家賃は払い捨てですが、ローンの支払いはある意味「貯金」です。だからこそ不動産は「早く速く」手に入れるべきだというのが、私の考えです。
中村 ただ、お客様の中には「今の不動産価格はバブルで、2020年の東京オリンピック後に下落する。だから今は買い時ではない」と考える人も多くいらっしゃいます。私はそんなことはないように思いますが、どうでしょうか。
野中 同感です。確かに不動産価格は都心を中心に上がっていますが、世界レベルで考えれば、たとえばニューヨークやロンドンと比べればまだまだ安い。しかも今、東京は戦略特区構想を打ち出して、世界中から投資を集めようとしている。2020年以降、さらに不動産価格が上がる可能性もあると思います。
中村 私がぜひ多くの人に知ってもらいたいのが「金利」というタイミングです。多くの方は物件価格にばかり目を奪われがちですが、むしろ重要なのは金利。たとえば35年ローンで4000万円を借りた場合、金利が1%違っただけで支払総額は1000万円近く違ってくるのです。
万一、地価の下落が起き、4000万円の物件が3600万円に下がったとしても、その間、金利が1%上がってしまえば、支払総額はずっと多くなる。つまり、不動産購入においては、物件価格よりも金利というタイミングが重要だとすら言えるのです。
野中 しかも現在は1%未満という歴史的な低金利。バブル時代の金利は8%もありましたし、リーマンショックの頃でも4%あった。ただ、この低金利がいつまで続くかは誰にもわかりません。そして実際、徐々に上がりつつある傾向も見られます。堅実な人ほど今、シングルのときに実需用の不動産を買うというのは、正しい判断だと思います。
更新:11月21日 00:05