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ラクスル代表が語る「競争しなくても勝てる方法」【前編】

2017年08月30日 公開
2017年08月31日 更新

【連載 経営トップの挑戦】第23回 松本恭攝 ラクスル[株]代表取締役

 

非効率こそチャンス。
発想の転換が勝機を招く

――大学を卒業されたあと、なぜコンサル業界に進まれたのですか?

松本 ちょうど私の就職年くらいからインターンシップ制度が始まって、いくつかの企業のインターンに参加しました。その中で、コンサルが最も面白かったからです。そして、できるだけ海外にいたかった私としては、外資系は内定が出るのが早いのも魅力的でした。
ちなみに当時、英語はめちゃくちゃ苦手で、TOEICの成績は340点(笑)。海外に行きたかったのは、英語を話せるようになりたかったというのも理由です。私は「見たことのない景色を見るのが好き」で、初めて行く土地を歩くことなど、とてもわくわくします。大学4年時は、1年間でバンクーバー、サンフランシスコ、シリコンバレー、他にもいろいろな地を訪れ、大いに刺激を受けました。コンサルタントという仕事を選んだのも、いろんな業界のいろんな世界に入って行き、知らない世界を見られる点に好奇心を刺激されたというのが大きな理由です。

――1年半の在籍期間中、印刷業界に注目されたときのことを教えてください。

松本 コンサルに勤めていたとき、M&Aの企業価値算定や市場リサーチ、そして主にコスト削減を担当していました。その間に印刷業界を知ったのです。当時、印刷業界は市場規模約6兆円で日本のGDPの1.2%ほどを占めていましたが、そのうち半分は大手2社が占めていて、もう半分のシェアを3万社の中小が奪い合っているという状況でした。さらに、市場規模に対して会社の数が多く、機械の稼働率がおよそ40%と非常に低かった。この状況を見て「これは改善の余地が大きい」と感じました。非稼働部分を活用できるようにするだけでも、大きな変化を起こせると考えたのです。
他にも、物流システム、開発、広告などのコスト削減プロジェクトに携わりましたが、やはり印刷が最も非効率が多いと思いました。

――非効率が多く、改善の余地が大いにあるのがわかったとしても、それですぐに会社を辞められるというのはすごいなと思うのですが。

松本 実は最初は、私が着目したような印刷業界の課題解決を掲げている会社がないか探したのです。でも、なかったので自分で創った、というのが実際のところです。正直、会社を辞めたときも成功できる絵までは全然描けていませんでした。
ただ、コンサルはロジックを積み上げていく仕事ですが、私はクリエイティブのほうが好きで、今ここにないものをゼロから作り出すことに面白さを感じるのに、このままコンサルにいたら私の想像力・創造力が死んでしまいそうだと感じていたのも事実です。それもあって、出ようと決めました。
当時24歳でしたから、起業して失敗しても、キズというよりむしろハクになるだろうという腹積もりもありました。だから、起業して3年やってダメなら諦めようと思っていたのです。27歳ならまだ引き返せますから、やるなら今が一番いいだろうと判断しました。

 

【後編】へつづく

著者紹介

松本恭攝(まつもと・やすかね)

ラクスル[株]代表取締役

1984年、富山県生まれ。2008年、慶應義塾大学商学部卒業、A.T.カーニー入社。コスト削減プロジェクトを担当したのち、09年、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を企業理念にラクスル[株]を設立。印刷価格の比較サイトを経て、CMでもおなじみの印刷ECサイト「ラクスル」を立ち上げた。15年には物流業界を変革すべく、各運送会社の非稼働時間で配送するネット運送・配送サービス「ハコベル」をスタート。現在も既存の産業構造を改善するべく、幅広い視野で「仕組み変革」に邁進している。

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