不動産投資は、他の投資に比べてリスクが低いという特長もあります。現時点では自己資金や資産がなくても、これから購入する予定の不動産を担保にお金を借りられて、しかもそのローンは不動産が毎月家賃を稼いで返してくれます。自己資金で投資し、自分が取引で成果を出さないと利益を得られない株やFXよりは、リスクはかなり低いと言えるでしょう。
もちろん、不動産投資もリスクはゼロではありません。空室や滞納、家賃相場の下落など、いくつかのリスクは想定できます。ただし、「自分は何のために不動産投資をするのか」という目的を明確にし、それに合った手法でリスクとリターンのバランスをとれば、リスクコントロールは十分可能です。
たとえば、アパートやマンションを一室単位で購入する「区分買い」なら、小さな額で購入できるので借入リスクは小さくなりますが、そのぶん毎月の家賃収入も小さくなります。一方、一棟を所有する「一棟買い」なら、金融機関からの借入額は大きくなりますが、その代わりに毎月入ってくるお金も大きくなります。また、区分は空室や滞納が発生するとその月の家賃収入はゼロになりますが、一棟ならそのリスクを分散できます。
このリスクとリターンをどうとるべきかは、その人の目的によって違ってきます。
老後に備えて少しずつ手元の現金を増やし、定年後も私的年金として一定の収入を得たいのか。あるいは早期リタイアして、不動産収入だけで食べていけるようになりたいのか。それによって、適切な借入額や物件購入額は変わってきます。よって、目的に合わせて計画を立て、五年先、十年先のお金の出入りをシミュレーションすることが、リスクとリターンのバランスをとるためには必要不可欠です。
「今は不動産価格が上がっているので、始めるなら下がるのを待ったほうがいいのでは」と考える人もいるかもしれません。ただ、現在の価格の上がり方は、かつてのバブルと比べれば緩やかです。もしこの先、不動産価格が下がる局面が来ても、バブル崩壊後のように急激な下がり方をする可能性は低いのではないでしょうか。
それにやはり、現在の低金利は大きな魅力です。不動産価格が下がるのを待っていたら、今度は金利が上がってしまうかもしれません。
マイナス金利の今、安定した給与収入がある会社員は、金融機関にとって魅力的な貸付先です。この先も安定した収入が見込める勤め先だと判断されれば、高収入でなくともローンは組めます。不動産という「物的担保」に加え、自分という「人的担保」も持っているのがサラリーマンの強みなのです。
前述したように、不動産投資は「事業」ですから、サラリーマンが仕事で培ったスキルを生かせる場面は少なくありません。経理や財務などお金の知識はもちろん、営業であればコミュニケーション力や交渉力を不動産業者との関係作りに役立てることもできます。購入後は手間がかからないとはいえ、うまく事業が回っているか、コストがかかりすぎていないかなど、結果を評価することは必要ですから、管理職の人ならマネジメント経験も生かせるはずです。
このように、不動産投資はサラリーマンに有利な条件が揃っています。検討する価値が高い投資法と言えるでしょう。
《『THE21』2017年9月号より》
更新:12月02日 00:05