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40代が脳の曲がり角...作業療法士がすすめる“記憶力を高める睡眠習慣”

2017年08月02日 公開
2023年09月15日 更新

菅原洋平(作業療法士)

「通勤電車の居眠り」が睡眠の質を悪化させる

睡眠の原理を知らずにいると、よかれと思ってやっていることが、実は深い睡眠を妨げていることがよくあります。ここで40代によく見られる4つのNG行動を見ておきましょう。

1つ目は、「ベッドの上で何かする」。脳は、場所と行為をセットで記憶する性質を持っています。たとえば、ベッドの上で読書をすると、「このベッドは文字を読む場所だ」と脳は記憶してしまい、睡眠とは関係のない脳の部位を働かせてしまうのです。

就寝前に本を読む習慣があるなら、その習慣は変えなくてもいいので、「場所を切り分ける」ことを意識してみてください。ベッドの横に椅子を置いて、読書はそこでして、ベッドの上では何もしない。そうすることで、「ベッドは睡眠する場所」と脳が記憶し、深い睡眠にスムーズに入れるようになります。

2つ目は、「眠くないのにベッドに入る」。脳が眠くない時間にベッドに入っても、睡眠は始まりません。そこで何か考え事をすると、「ベッドは考える場所」という記憶がつくられ、余計に眠れなくなってしまいます。

3つ目は、「就寝前にうたた寝寝する」。仕事帰りの電車の中でつい眠ってしまう人や、子育てなどの疲れからうたた寝をしてしまう人もいるでしょう。しかし、うたた寝をすると本睡眠で深く眠ることができません。

睡眠は、連続して起きていた後の睡眠が最も充実します。眠らない時間に溜まった眠気を「睡眠圧」と呼びますが、睡眠圧をうまく活用して睡眠の質を高めることが大切です。

4つ目は、「寝る時間をそろえようとする」。私たちは子供の頃から「早寝早起き」と習ってきたため、「就寝時間をそろえれば、朝起きられるようになる」と思いがちですが、それは正しくありません。

脳は、起床して光を浴びた時を「朝」と認識し、そこから16時間後に眠くなる仕組みです。最初は就寝時間がバラバラでも、起床時間をそろえることで、夜にしっかりと眠れるようになります。

 

「起床4時間後」の眠気の有無をチェック

では、脳にいい睡眠が取れているかは、どのように判断すればいいのでしょうか。

「6時間寝たから十分」とか、「途中で目覚めてしまったから、いい睡眠が取れなかった」とは、必ずしも言えません。なぜなら、最適な睡眠の長さは人によって異なりますし、また日照時間が変わる季節によっても変化するからです。

それに、深い眠りは大事ですが、かといって浅い眠りやレム睡眠が必要ないわけではありません。浅い眠りはひらめきを生み出し、また、レム睡眠は余計な感情の記憶を消去する役割を担っています。

もし、睡眠中にレム睡眠が多く現れたなら、昼間に生じた嫌な感情を溜めないように、脳が睡眠のサイクルを調整していると考えられます。

質のよい睡眠が取れたかどうかを判断するには、睡眠がどうだったかを見るのではなく、目覚めているときのパフォーマンスを判断基準にします。頭は、起床から4時間後が最も冴えています。

6時に起床する人なら、午前10時です。この時間に眠気があるかどうかをチェックし、もし眠気があれば、睡眠の質が悪いか、量が不足しているということになります。

 

貧乏ゆすりは睡眠不足のサイン!?

眠気のサインは、人それぞれ違います。自分なりの眠気のサインを把握しておくとよいでしょう。

いくつか例を挙げると、「文章を読むときに、同じ行を2度読んでしまう」「パソコン操作で普段はやらないミスタッチをくり返す」といったことがあります。

これは「マイクロスリープ」と言って、2~7秒ほどの短い間、脳の一部が眠っている状態です。「思ったこととは違うことを口走ってしまう」「ろれつが回らない」「物を落とす」なども同じ現象です。

「なんとなく落ち着かない」「些細なことで動揺する」といった状態も、セロトニン不足によって生じる睡眠不足のサインです。

セロトニンは、脳を緩やかに覚醒させつつ、急な刺激に驚かないよう調整する物質です。セロトニンが不足すると、前述のように気分が不安定になりますが、一方でセロトニンはリズムのある運動で分泌される特徴があるため、「うろうろ歩き回る」「ボールペンをカチカチ鳴らす」「貧乏ゆすりをする」などの律動的な運動も生じてきます。

これらのサインは、ややもすると、「気の緩みから集中力が低下している」とか、「せっかちな性格」「ストレスが溜まっている」といった言葉で片づけられてしまいがちです。

しかし、実体は脳の覚醒レベルが下がっていることを示す生理現象です。生理学的な問題を心理学的な問題にすり替えるのではなく、脳という内臓の問題として、生理学的に解決していく必要があります。

昼間のパフォーマンスが最大になるはずの時間に眠気のサインを自覚したら、質のよい睡眠を妨げるNG行動を取っていないか、生活を見直してみてください。

睡眠の質をよくすることを意識して生活すれば、睡眠のサイクルは脳が自動的に調整してくれます。疲労回復や健康維持のみならず、記憶力アップのためにも、睡眠を中心に生活を見直してみてはいかがでしょうか。

 

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