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『大阪王将』の社長が社交ダンスのレッスンに通う理由とは?

2017年05月13日 公開

文野直樹(イートアンド社長)

 

40歳になったら仕事一辺倒はやめよう

 このように、文野氏が趣味の習慣を持つようになったのは、40代に差しかかった頃だ。

「25歳のときに創業者である父の跡を継いで社長になり、そこから30代の終わりまでは、店舗を拡大し、売上げを伸ばすことしか考えていませんでした。しかし、40代に差しかかる頃、自分の器の狭さというか、限界のようなものを感じはじめたのです。

 また、このまま仕事一辺倒ではつまらない人生になってしまうのではないか、という気持ちもありました」

 そこで、さまざまな趣味を始めた。40歳から5年間はボクシングジムで汗を流し、45歳から10年間は、マラソンの愛好会に入って、フルマラソンに挑戦するようになった。

「正直なところ、練習をしながら、『やらなければならない仕事がたくさんあるのに、こんなことをしていていいのか?』と思ったことは1度や2度ではありません。仕事にすぐ結びつくわけではないので、そう感じてしまうのですね。

 しかし、振り返ると、さまざまな趣味のコミュニティに参加したことで、明らかに思考回路の幅が広がりました。その間、会社自体も、大阪の中小企業から東証一部上場企業へと成長していますから、かなり意味があったのではないかと感じています」

 

習慣化のコツは「他の人を巻き込む」こと

「ある程度、本格的にやってみないと、得るものが少ない」との考えから、文野氏はどの趣味にも真剣に取り組んでいる。マラソンをしていた頃は、大会前になると、忙しい合間を縫って、月間150kmは走っていたそうだ。多くの人は、仕事が忙しいと趣味を諦めてしまいがちなのに、なぜ文野氏は続けられたのだろうか。

「1つは、大会にエントリーしていたからです。マラソンをしていた頃は、大会が終わるとすぐ、次の大会にエントリーしていました。こうすると練習せざるを得ません」

 もう1つ重要なのは、「他の人を巻き込むこと」だという。

「たとえば、マラソンは、加盟店のオーナーさんに誘われて始めたので、その人と一緒に練習をしていました。そうなると、自分から『やめる』とは言い出しにくいですよね(笑)。そういう仲間を見つける意味でも、なんらかのコミュニティに属したほうがいい。今はネットでいくらでも見つかるはずです」

 

《『THE21』2017年5月号より》
《取材・構成:杉山直隆 写真撮影:まるやゆういち》

著者紹介

文野直樹(ふみの・なおき)

イートアンド〔株〕代表取締役社長

1959年、大阪府生まれ。80年、父親が創業した大阪王将食品(96年に〔株〕大阪王将へ、2002年にイートアンド〔株〕へ社名変更)に入社。85年、大阪王将食品の代表取締役社長に就任。

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