2017年03月14日 公開
2022年03月31日 更新
そこで今、地方の企業で求められているのが、経営改革を担える優秀な人材だ。とはいえ、スーパーエリートやカリスマ的リーダーである必要はない。
「ビジネスパーソンとしての基礎能力が身についていれば、十分戦力になる。管理職の経験があれば、マネジメントスキルも生かせるでしょう。
ローカルの世界では、グローバルの世界のように複雑で最先端な戦略論は求められません。
サービス業などの現場型の事業が多いので、真面目にコツコツとPDCAを回し続け、オペレーショナルエクセレンスを実現するほうが大事です。
労働生産性が低いということは、改善の余地が大きいということ。だから当たり前のことを当たり前にやるだけで、高い成果を出せる可能性がある。東京で同じ仕事をするより、勝率ははるかに高いのです。経営に関わる意志と地道に努力する意欲があれば、誰でも優秀な経営人材として貢献できるでしょう」
こうした地方のニーズを受け、国や自治体もU・Iターンを希望する人と地方の企業をつなぐ事業に力を入れ始めている。
「地方創生を推進する内閣官房『まち・ひと・しごと創生本部』では、都市部で働く人材と地方の企業をマッチングする事業を行なっています。また、2015年には、官民ファンドの子会社として『日本人材機構』を立ち上げ、同様の人材マッチングを行なっています。
ただし、両者をただ引き合わせればうまくいくわけではありません。重要なのは、企業の側に戦略があるかどうか。ビジネスモデルをどう展開していきたいのか、何を改善したいのか。それを明らかにしなければ、転職希望者も自分がその会社で活躍できるかどうか判断ができません。ですから日本人材機構では、企業側の戦略を明確化するために、かなり丁寧なコンサルティングを行なっています」
日本人材機構では冨山氏も社外取締役を務めているが、「地方企業への転職を希望する応募者は予想以上に多い」と話す。
「しかも、30代や40代の働き盛りの世代が多い。当初は、リタイアが近づいてきて第2の人生を考える年代が中心になるかと思っていたのですが、この点は意外でした。
応募の理由はさまざまですが、『自分が力を発揮できる場所が他にもあるのではないか』と考える人は多いですね。大手グローバル企業では、国内での競争を勝ち抜き、さらに世界での競争を勝ち抜いて、ようやくひと握りの人間だけが経営層に入れる。中間管理職世代になり、自分が将来そこに入れるのだろうかと考えたとき、地方の会社が選択肢に入ってくるのでしょう。
地方は中堅・中小企業が多いので、比較的早い段階で上のポジションに就けます。大手企業では部課長クラスだった人が、地方の企業なら副社長や事業部門長などの高い地位で迎えられることも珍しくない。巨大な組織の駒として埋没するより、小さな組織であっても経営に近いところで働くほうがメリットは多い。そう考える人が増えているのではないでしょうか」
更新:11月22日 00:05