2017年03月22日 公開
働く人にとってのストレス要因の一つに、職場の人間関係がある。コミュニケーションを円滑にし、無用な対立を避けるために、心がけておくべきこととは。産業カウンセラーの宮本実果氏によれば、とくに40代は人間関係でストレスを溜めやすい「ダメージ世代」だという。上司、部下それぞれとのストレスの少ない接し方について教えていただいた。《取材・構成=林加愛》
産業カウンセラーとして働く人たちの悩みを聞く中で、職場の人間関係やコミュニケーションについて最も頭を悩ませストレスを溜めているのは、現在30代後半~40代の世代だということを感じています。いわゆる「傷つきやすい若者」を部下に持つ気苦労に加え、上司からは無理難題が降ってくる、という状況です。ある意味、板挟みの「ダメージ世代」と言えるかもしれません。
この世代がしばしば抱くのは「他の世代に比べ、自分たちは損をしている」という感覚です。上司であるバブル世代と違って就職氷河期の苦しみを味わい、その後も不況下で閉塞感を覚えながら仕事をしてきました。
また、部下育成やマネジメントについても同様です。彼らが新人の頃は、怒鳴りつける上司がいたり、上司の顔色をうかがって仕事をしなければならない場面もあったでしょう。ところが、いざ自分が上司になると、少し強く言っただけで「パワハラ」と言われる時代に。さらに、プレイングマネジャーとして自分でも成果を出しつつ、部下にはきちんと仕事を教えることを求められています。理不尽だと感じる人が多いのもうなずけるでしょう。
そうした不満を抱えつつ、日々現場で板挟みになっている40代が対人ストレスを軽減するには、どうしたら良いのでしょうか。
何よりもまず、上の世代と下の世代それぞれとの感覚の違いを把握し、適した対応をすることが重要だと考えます。
部下世代に対しては、「コミュニケーションの方法」を共有することが必要です。上司の断片的な言葉から指示内容を「察して」動いてきた四十代と違い、今の若手たちには手取り足取り教えないといけない、とまずは理解することです。
「『例の件』はどうなった?」「『あれ』、持ってきて」では、彼らには通じません。「AとBの資料を、いつまでに、何部」用意するよう指示し、その使用目的も明示する、というふうに、具体的に伝えることが基本です。
そしてもう一つ、40代がギャップを感じる若者の特徴に、「報連相の軽視」があります。彼らはメールなどのデジタルツールが発達した時代に育ったため、直接の会話による伝達の必要性をそもそも感じていません。重要事項であってもメールにCCをつけて転送すれば、それで報告完了としてしまうことも。
この感覚の違いを超えるには、上司自らが直接、報連相を行なって見せることが必要です。それにより、きちんと報告することで初めて伝わるということを肌感覚として知ってもらえます。
一方で、上の世代に対してはどうでしょうか。
上司に関する悩みを語る中間管理職から頻繁に出てくるのが、「意味のない○○」というキーワード。出席義務のない報告会議になぜか招集される、メール一本で済むようなことについてわざわざ呼び出される……などです。
上司世代は「型」を重視する傾向にあり、意味がないと思われる会議にも、「一同に会する」という形に意味を見出しています。ここで「この会議は意味がない」「私は出席する必要がない」などと直接的に言ってしまっては、ことを荒立てます。納得ができないかもしれませんが、まずはその要求を満たすことに意味を見出して、ひとまず従いましょう。
そのうえで、徐々に角を立てない程度の働きかけをしましょう。会議冒頭に「この会議は、どのような目的で開催されているのでしょうか」と質問してみるのです。聞きづらければ、次回の日程を決める場面で、「この会議の内容は、メールで共有できそうですね」などと言ってみるのも良いでしょう。そうすると、実は集まる必要はなかった、ということに気づいてもらえるかもしれません。
ただし、「部長は顔を合わせて話すことを大事にされているのでしょうが、お忙しいと思いますので」などとひと言添えて、共感を示すのも忘れずに。
いったんこれらのルールを作ってしまえば、その後のコミュニケーションは格段にスムーズになります。
万一それでうまくいかなかったとしても、「伝えた」事実があるとないでは大違い。「部下は結局失敗したが、自分はきちんと具体的に指示した」「上司には却下されたが、言うべきことは言った」と思えれば、対人ストレスは少なくなるでしょう。
更新:11月22日 00:05