2015年10月30日 公開
2022年09月28日 更新
人間関係の悩みといっても、さまざまなケースが想定される。しかし、ベースとして心理学の知識を持っておくことで、「悩みごと」に発展する前に自己解決できたり、考え方が楽になったりすることも多いと思われる。そこで、豊富な臨床経験を持ち、心理学に関する著書を多数執筆する人気精神科医のゆうきゆう氏に、人間関係の悩みに効く心理学について教えてもらった。
私が経営するクリニックには、メンタルで悩む方がたくさん訪れます。悩みの内容はさまざまですが、やはり「人間関係」は一つ、悩みの要因として非常に大きな要素となっているようです。
心理学者のアルフレッド・アドラー氏は「人間は社会的な生き物である」と定義しました。もしあなたがこの宇宙にたった一人きりだったら、人間関係で煩わされることは一切ありません。しかしそれは同時に私たちの生きている社会の喪失を意味します。
私たちが社会生活を送っていくということは、すなわち「対人関係から逃れることができない」ということでもあるのです。
今は個人主義の時代だと思う人もいるでしょう。しかし、多くの人は子供の頃から「周囲から浮かないように」「和を乱さないように」といった暗黙のルールを教えられていたのではないでしょうか。
上司や部下・同僚や配偶者・親兄弟・友人といった個人的に重要と考えられる存在について、「この人に嫌われるとまずい」「居場所がなくなる」といった恐怖にも似た感覚を抱く人は、多いものです。
これらのことを前提として考えると、対人関係がいかに生きていくうえで大きなウェイトを占めるかなんとなく想像できるのではないでしょうか。
具体的な対人関係に悩む以前に、人づきあいが全般的に苦手だという人もいます。そういう人が「これでいいのか」と悩んでしまうのは、自分という人間についての理解よりも、他者が決めた「こうあるべき」「これが善」といった考えを優先して苦しんでいるからです。
人づきあいが苦手な自分をダメだと感じる背景には、社会的な立場や他人の目などによって、自分自身を裁く心のクセが存在しています。
心理学者のユングは、人間を「外向型」「内向型」という二種類に分類しました。外向型は人間関係や自分の外側に関心を向けやすく、内向型は自分の感情や感覚などといった部分に関心を向けやすいというものです。分類と言っても、実はどちらもすべての人が持ち合わせている要素です。
外向型・内向型といった傾向があるように、人にはそれぞれタイプがあり、それはどれも間違ったものではありません。人とのつきあい方、距離感、接し方などに、正解を求めなくて良いのです。あなたなりの距離感で他人と接していくことが大切です。
多くの人は対人関係で悩むとき、自分を相手の意向に沿わせて変えようとするか他人を自分の意向に沿わせて変えようと努力し、深い悩みを抱えます。
基本的に他人がこちらの思い通りになることはありませんし、他人の気に入るように自分を変えることは大きなストレスですから、どちらを選んでも対人関係の悩みは深いのです。つまりどちらに転んでも、実際には上手くいきにくいのです。
そういった対人関係で起こりがちなジレンマを解消するのは、自分自身の意識・心の持ち方を変えることがとても大切です。
ここで変えるべき自分とは、「他人に気に入られるために」という動機づけから離れたものです。他者の視線をある程度振り切るには、勇気が必要ですね。先述のアドラー氏はそのために「自分を認める力」が必要だと言っています。自己肯定感という言葉を使ってもいいでしょう。
自信のない人ほど、他人の評価に振り回されがちです。だから他人の評価を変えるために自分や他人を変えようとするのです。対人関係とは決して「相手にへりくだって好感を得る」ことではないのです。
健全な対人関係とは、互いに対等の人間として接していくことを指します。そのためにはまず、あなた自身が自分を認め、そのうえで相手と対等に、あるいは相手の立場に理解を示しながら、接していくことが大切です。
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更新:11月22日 00:05