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「お金の悩み」をすべて自動で解決するサービスを

2017年01月25日 公開
2022年05月25日 更新

辻 庸介(マネーフォワード社長CEO)

 

テクノロジーがユーザーの悩みを解消する

 

 ――競合他社に追いつかれないための施策はあるのでしょうか?

 他社のことはあまり気になりません。重要なのは、ユーザーにいかに良いサービスを届けるか。ユーザーの課題を理解して、それを解決するために何が必要かだけを考えています。

 そのためには、ビジョンを掲げて、同じ想いを持ったメンバーに集まってもらわなければなりません。「ミッション・ビジョン・バリュー」というのは本当に大事だなと、最近、とくに強く思います。

 ――ユーザーが抱えるお金の課題というと、具体的にはどういうものが多いのでしょうか?

 個人だと、子供の教育費をどうするか、老後をどうするか、生命保険をどうしたらいいのか、などなど、わからないことがたくさんあると思います。国もさまざまな施策を打っているとはいえ、頼れるような財政状況ではありませんから、それぞれが考えておく必要があるでしょう。

 中小企業だと、経営改善です。たとえば、今日の売上はいくらだとか、コストはいくらだとかという数字をリアルタイムで見ることができれば、経営改善ができますし、次の手を打つこともできます。

 ――中小企業向けの『MFクラウドシリーズ』には、会計、確定申告、請求書、消込、給与、マイナンバー、経費と、多くのラインナップがあります。

 勤怠のデータを給与計算に反映させたり、さらにそれを会計に反映させたりと、一連の流れを作れるのがクラウドの良いところなので、ラインナップを広げているのです。これらのうち5つのサービスを、5人以下での利用なら月額3,900円(税抜)で利用していただけるバリューパックも販売しています。これを導入していただくと、バックオフィスに割く労力が減るし、システムのコストも減って、本業に集中できるようになります。

 ――会社の中で流れる数字をすべて一元的にクラウドでつなぐということですね。

 そういうイメージです。そうすることでリアルタイムに数字を見ることができるようにもなり、経営改善に役立てていただけるということですね。

 ――価格を安く抑えられている理由はなんでしょうか?

 一般的に、従来のパッケージ型のソフトと違い、在庫を持たないことが、クラウドサービスの価格を安く抑えられている要因として大きいですね。あとは、エンジニアの生産性ですね。能力が高く、1人当たりのアウトプットが大きいエンジニアがそろっているので、社員数を抑えられているのだと思います。

 ――あとから市場に参入するのは難しそうですね。

 難しいでしょうね。何より、優秀なメンバーが、ひたすら良いサービスを作ることに一生懸命になってきた蓄積がありますから。日本のメーカーがモノ作りのノウハウを蓄積してきたのと同じです。

 ――海外展開も進められている?

 まだ調査の段階です。日本でNo.1になって、次はアジアに出ていきたいので、どこにチャンスがあるのかを調べています。

 海外で使われている日本発のソフトウェアは数少ないのですが、ソニーやトヨタのように、世界中でプロダクトが使われる会社になりたいと思っています。そのために乗り越えなければならないハードルは多いのですが。

 ――たとえば、どういうハードルがありますか?

 日本はガラパゴスなところもあるので、グローバルに通用するサービスにしなければなりません。一方で、それぞれの国のローカルルールにも合わせなければならない。

 ――米国にも同様のサービスを展開している企業があるので、グローバルな競争は国内よりも厳しいのではないかと思います。

 米国にはIntuitという2兆円企業があるので、米国市場に参入するのは、普通に考えると難しいでしょう。Intuitは日本市場にも進出してきたことがあるのですが、ローカライズが難しくて撤退しました。当社がアジアの市場に進出するときにも同様の問題が生じるので、実力が試されるところですね。

 ――海外進出の他に、これからの成長のために注力されていることはありますか?

 『マネーフォワード』は、任せておけば勝手に必要なことをやってくれて、お金の悩みが自然となくなるサービスを目指しています。そのためにやるべきことは、まだまだあります。

『MFクラウドシリーズ』については、経営改善の要ともなる「資金繰り改善」ができるようなサービスを充実させていきたいです。すでに1月から、『MFクラウドファイナンス』という新サービスをローンチしています。これまでは銀行の営業担当者が足を運ばなかったような小規模企業でも、お金が必要なときに短期間で融資を受けられるようにする仕組みです。人工知能を使って、「この時期にお金を借りたほうがいいですよ」「この時期はお金があるので投資に回したほうがいいですよ」といったアドバイスもできるようにしたいと考えています。

 ――これからもサービスは内製していこうという考えですか? 他社を買収することもあり得る?

 基本的には自分たちで作っていきたいですが、一緒にできる良い会社があれば、とは思います。ただ、セキュリティーが最も大事なので、あくまで内製が基本ですね。

 

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著者紹介

辻 庸介(つじ・ようすけ)

〔株〕マネーフォワード代表取締役社長CEO

1976年、大阪府生まれ。2001年、京都大学農学部卒業。11年、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー〔株〕、マネックス証券〔株〕を経て、12年、〔株〕マネーフォワードを設立。個人向けの自動家計簿・資産管理サービス『マネーフォワード』およびビジネス向けクラウドサービス『MFクラウドシリーズ(会計・確定申告・請求書・消込・給与・マイナンバー・経費)』などを提供している。

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