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人気作家が朝4時起きで執筆する理由とは?

2016年12月19日 公開
2022年09月21日 更新

江上剛(作家)

無意味な残業は午前中の「サボり」につながる

江上剛

銀行員時代は周囲もみな朝早かったが、といって夜に早く帰れるわけではなかった。とくに当時は、ムダな残業が常態化していたという。

「本部で下っ端として会議の手伝いをしていたときの話です。ある会議で、役員が支店長会議で行なう挨拶の文言について延々と議論していました。中身について議論するならわかりますが、『ここは「の」がいいか、「が」がいいか』というレベルの下らないことを、夜遅くまで話し合っているのです。

夜の10時を回ると、私に『お腹が空いた。寿司の出前を取ってくれ』と言う。私は待たされている腹いせに、役員たちには並を、自分だけ上を注文していました。そうでもしないとやっていられないくらい無意味な時間でした。

このようにムダな残業はもちろんですが、必要性のある残業であっても、残業が仕事の生産性を落とすことは確かです。残業することが当たり前になっている人は、夜に頑張る体力を温存するため、午前中に手を抜きがちです。

実際、支店で営業をしていた頃の私がそうでした。早く帰るわけにいかなかったので、仕方なく残業する毎日。翌朝出勤してきても、『また今夜も遅いんだろうな』と思うと、朝から全力を出す気になりません。『行ってきます!』と元気よく声だけ出して、午前中は喫茶店でサボリです。

これでは生産性が高まるはずがありません。残業をやめて、そのぶん朝に頑張ったほうが、ずっと質の高い仕事ができるはずです」

 

「残業ゼロ」を宣言し全店トップを達成

朝から全力で活動したくても、残業があるから無理だと思う人も多いだろう。しかし、その残業は本当に不可避なのか。ほとんどの場合、答えは「ノー」だ。

「その気になれば、残業はなくせます。私は意味のない残業が大嫌いだったので、高田馬場支店の支店長になったとき、真っ先に『残業なし』を宣言。当時、営業は12時まで働いていましたが、残業は7時まで。事務方は定時の5時に帰るように指示しました。

いきなり残業をゼロにすることは困難ですが、余計な仕事をなくし、効率を高める意識を持って仕事をすれば、残業を発生させる具体的な要因が見えてきます。それを1つずつ潰していけば良いのです。

また、一人ひとりに今年やりたいことを書いてもらったことも効果的でした。『新規開拓の実現』『英語の資格を取りたい』など、掲げた目標は人それぞれでしたが、目標が明確になれば、残業削減が他人事ではなくなります。自分の時間を確保するためには、自分で残業を減らさなくてはいけないという意識がみんなに芽生えたのです。

その結果、事務方は4時半に仕事が終わるようになりました。定時まで30分あるので、自主的に営業電話をかけ始める行員も現われました。営業も7時に帰って家族サービスするので、みんな表情が明るい。一人一人がイキイキと働くようになった結果、支店の業績は大幅に伸びて、全店一位になりました。

このように、残業をなくすことは不可能ではありません。それどころか、そのほうが成果が上がるのです」

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著者紹介

江上 剛(えがみ・ごう)

作家

1954年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。77年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。03年に同行を退職し、執筆生活に入る。
主な著書に、『会社人生 五十路の壁』『ラストチャンス 再生請負人』『庶務行員 多加賀主水が許さない』『我、弁明せず』『成り上がり』『怪物商人』『翼、ふたたび』『クロカネの道』『奇跡の改革』『住友を破壊した男』『百年先が見えた男』などがある。

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