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40代ビジネスマンがストレスを抱える理由

2016年10月13日 公開
2016年11月14日 更新

吉岡俊介(シニア産業カウンセラー)

 

団塊世代の価値観から抜け出せない40

 とはいえ、組織で働くビジネスマンであれば、ずっと「ヨコ・モード」でいるわけにもいきません。仕事で成果を上げ、経済の発展に貢献するには、「タテ・モード」で過ごす時間も当然必要です。私が問題だと感じるのは、24時間絶え間なく「タテ・モード」のストレスにさらされている人があまりに多いということ。よって重要なのは、「タテ・モード」と「ヨコ・モード」をうまく切り替え、オンとオフのメリハリをつけることです。「昨日は目いっぱいタテ・モードで働いたから、今日は残業せず、夜は家族とゆっくりヨコ・モードで過ごそう」といったように意識的にモードを選択できれば、ストレスでつぶれることもなくなります。

 ただ、その理屈がわかってもなお、建て前の世界から抜け出せないビジネスマンは多いようです。とくに中間管理職世代は上と下に挟まれて、組織のルールに従わざるを得ない立場にあるからです。

 加えて、今の40代は団塊ジュニア世代であり、親である団塊世代の価値観の影響を強く受けています。団塊世代はまさに「タテ・モード」の時代の真っただ中で生きてきた人たちです。自分の本音を押し殺し、会社のために滅私奉公することで、高度経済成長を支えてきた。それでも会社が成長し、給与や待遇にも恵まれたからこそ、団塊世代はつぶれずに働き続けることができました。

 ところが、今は経済状況がまったく違います。いくら頑張っても必ず成果が出るとは限らないし、昇給や昇進といった自分を肯定する機会が与えられるわけでもありません。それなのに、価値観だけは「タテ・モード」を引きずっている。だから組織の建て前を優先しつつ、自分でも「何かおかしい」と違和感を抱きながら働いているわけです。つまり、新しい時代に適応するためのロールモデルを見つけられないまま、手探りで右往左往しているのが今の40代ではないでしょうか。

 これが20~30代になると、「ヨコ・モード」を大事にするという新たな価値観を見出しています。会社の人間関係だけに縛られず、SNSなどを通じて友人や仲間たちとの横のつながりを大切にする人が多いのは、その表われでしょう。その中で40代の管理職たちは、価値観を切り替えられずに苦しんでいるように見えます。

 IT化によって仕事の内容が変化したことも、今のビジネスマンの負担を大きくしています。パソコンなどの端末画面を見続ける時間が増えると、交感神経を高ぶらせ、気持ちが落ち着かない状態が続きます。同じ残業時間でも、ひと昔前に比べて疲労感は何倍も大きいのです。

 さらに家に帰ってからも、気分転換のつもりでスマホを見たり、ゲームをしたりするので、ますます交感神経が優位になって眠れなくなる。眠れないから仕事のことが気になり、自宅のパソコンを開いて仕事を始めたり、挙げ句の果てに部下に電話をして「あの件はどうなった?」などと問いつめて、部下にまでストレスを感じさせてしまう。こうして、ますますオンとオフの区別がつかなくなるという悪循環に陥っている人が目立ちます。

 その一方で、企業のコンプライアンス強化を背景に、「パワハラになるのではないか」と恐れて部下に仕事を頼めず、自分で抱え込んでしまう管理職も増えています。私のもとへカウンセリングに来る人の中にも、「部下を叱るのが苦手」と語る人が多く、いい上司であろうとするがゆえに自分がつらくなっている管理職が少なくありません。

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著者紹介

吉岡俊介(よしおか・しゅんすけ)

シニア産業カウンセラー/キャリアコンサルタント

1954年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、東京海上火災保険㈱(現・東京海上日動火災保険㈱)入社。2001年、早期退職。その後、男性学、男女共同参画、フェミニズムなどを学びながら、04年より近畿の地方自治体を中心に「男性の悩み相談」の相談員を務める。07年、カウンセリングルームのオフィスよしおかを設立。著書に、『産業カウンセラーが教える「つぶれない働き方」の教科書』(彩図社)など。

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