2016年09月14日 公開
2023年05月16日 更新
細やかな気遣いで社員と向き合う経沢氏だが、ここに至るまでには長い時間がかかったと振り返る。
「26歳で社長になった私にとって、社員との接し方は難しいテーマでした。未熟さゆえに失敗したことも多々あります。
一番の間違いは、『自分が正しいと思うことを言えばいい』と思っていたこと。そこには、相手の気持ちを考える視点がありませんでした。相手も自分と同じように物事を考え、感じると思っていたんですね。鏡に映った自分に話しているようなものでした。
世の中には自分とは違ういろいろな人がいて、コミュニケーションを取るためには相手の心の動きにまで目を配らなくてはいけない。10年ほどかけて、そのことを学びました」
雑談も含めた会話において本当に重要なのは、言葉ではなく「心」に着目することだと経沢氏は強調する。
「言葉だけを聞いて、それをそのまま受け取ると、間違いも起こりやすい。大事なのは、その背後にある想いです。相手がなぜその話をするのかを考えながら聞く。その想いを汲み取り、相手の心に伝わる言葉を返す。この姿勢を忘れずにいたいですね。
雑談は相手の想いを知るチャンスでもあり、トレーニングの機会でもあるのです」
言葉の裏にある心を読み取ろうとする姿勢は、社外の人に対しても一貫している。
「たとえば、昨年参加したIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)の新サービス発表の場『Launch Pad』でベビーシッターサービス『キッズライン』のプレゼンをしたときには、『女性の活躍』も『少子化問題』も待ったなしの状況で、これらに真剣に向き合うためにはベビーシッターサービスが必要だ、というプレゼンをしました。『女性がやる、女性のためのサービス』で終わらせたくないので、男性の経営者の方々にも共感していただけるように意識したのです。
私たちの事業を展開するためには、男性の方々にも協力していただかなければならない。そのためには、どういう話し方をすればいいのか。雑談の中で相手の気持ちを理解しようとする習慣を身につければ、そのように考えられるようになります」
《取材・構成:林 加愛 写真撮影:まるやゆういち》
《『THE21』2016年5月号より》
更新:11月24日 00:05