2016年08月10日 公開
2023年05月16日 更新
そんな社会保険労務士資格であるが、知名度が低いというほかにもっと大きな問題がある。企業に勤め続けるならともかく、社労士として働こうにも「食べていけない」と言われているのだ。
確かにここ数年来、資格保持者の増加により、士業の世界は稼ぐことが難しくなってきている。その中でも特に大変だと言われるのが社会保険労務士なのだ。
『資格をとると貧乏になります』(佐藤留美氏・新潮新書)という本が最近、話題になった。本書の中でも「社労士の仕事で食べていける人は、私の実感では1割程度」とか、「合格後も仕事がないため、資格学校に行って勉強ばかりしている」など、散々な取り上げられ方である。
私自身、資格取得に要した費用は受験料などを含めると年間20万×3年分で60万円。試験合格後の講習代や登録料なども含めると100万近くになる。さらに勉強にあてた2000時間を使って時給1000円のアルバイトをしたと仮定すると、1000円×2000時間で200万にもなる。300万円相当の費用を回収できるほどの収入アップがあったかというと、答えは“ノー”だ。
では、社会保険労務士は実際に食べていけない、割に合わない資格なのだろうか。
平成27年の社会保険労務士の平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば670万円。なかなかの数字だが、会社に勤務している人も含んでいるのであまり意味がないと言われている。大企業の総務部にいる社会保険労務士などが数字を押し上げるからである。
社会保険労務士として働いている人に関してはピンキリだが、東証一部上場企業の平均年収(約590万)よりは下回るが、女性の平均年収や中小企業に勤務している若手会社員の平均年収よりは高い、といったところが実際ではないだろうか。
だが、こと「求人」という意味では、見方は変わってくる。
昨今、マイナンバー制度の導入やメンタルヘルスの義務化などにより一部の社会保険労務士事務所は仕事量が増加し、中途採用を積極的に行なっているのだ。社会保険労務士関連の懇親会に出席した主婦がパートとして即、採用になったという話を聞いたこともある。私自身も有志が集まる勉強会がきっかけとなり、今は社会保険労務士事務所で働いている。この資格があれば、50歳を超えた未経験者にも門戸が開かれているのである。
更新:11月26日 00:05