THE21 » キャリア » 仕事の成果に直結する「2つの数学的思考力」とは?

仕事の成果に直結する「2つの数学的思考力」とは?

2016年08月19日 公開
2023年02月06日 更新

深沢真太郎(BMコンサルティング代表)

数字に強い人ほどいきなり数字に触らない!?

次に、「手元にある数字を分析する力」について考えてみます。
数字を分析する場面としてよくあるのは、売上げを分析する場面でしょう。たとえばA店とB店の優劣を判断するのに、「売上げ額」「従業員数」「店舗面積」の三つの数字があるとします。このとき、仕事で成績を出す人と、仕事で成績を出せない人、もしくは数字が苦手な人とでは、数字の扱い方に大きな違いがあります。

仕事で成績を出す人は、いきなり数字を操作せずに、「その数字で何を分析したいのか」という目的を明確にし、「数字をこう操作すれば目的の結果が得られそうだ」と仮説を立ててから始めます。もし「従業員一人あたりの売上げ額」だけで評価すればよいのでしたら、「売上げ額」÷「従業員数」だけを計算するため、数字の扱いがとてもシンプルです。

一方、仕事で成績を出せない人や数字が苦手な人は、何も考えずにいきなり数字を操作し始めます。手元にある数字を使って、取りあえず足したり引いたり、掛けたり割ったりします。その結果、計算した数字が何なのか、本人にもわからないということが本当に多いのです。

数字を分析するうえでは、ただ計算すればいいというものではなく、この数字で何をしたいのかという目的意識を持って数字を扱うことです。普段から「これはどういう数字だろう」と数字を読み、「このように操作したらどうなるだろう」と想像し、確かめる。これを繰り返すことが、目的意識を持って数字を扱うトレーニングになるでしょう。

 

掛け算で分解すれば会社の数字が見えてくる

数字の分析において、もう一つのポイントは数字を細かく分解して考えることです。

たとえば、最近の売上げが低迷していて、その原因を探りたいという場合を考えてみます。「売上げ額」の構成要素を次のように因数分解してみます。「売上げ額」=「広告リーチ数」×「認知率」×「来店率」×「成約率」×「客単価」×「リピート率」。あるいは「雑誌の販売部数」=「書店数」×「平均配本数」×「消化率」。このように数字を分解し、「現実」を丸裸にすることで、どの要素に改善余地があり、そのために何をすべきかが具体的に見えてきます。

数字や数式は、細かくすればするほど、教えてくれることがたくさんあります。普段から「この数字は何と何の掛け算になっているだろう」と考えることが、数字の因数分解に慣れるトレーニングになります。
 ビジネスマンに必要な二つの数学的思考力を紹介しましたが、これらの力を身につけるために難しい数学の学び直しは不要です。中学までの数学の知識を使って客観的に物事を考えることができれば、ビジネスの問題解決に大いに役立つはずです。

 

《『THE21』2016年8月号より》

☆深沢氏著書
『そもそも論理的に考えるって何から始めればいいの?』(日本実業出版社)

☆深沢氏プロフィール動画

著者紹介

深沢真太郎(ふかさわ・しんたろう)

BMコンサルティング〔株〕代表

1975年、神奈川県生まれ。日本大学大学院修了。数学の教員免許を持つ。大手予備校の講師等を経て、ビジネス数学を提唱する教育コンサルタントとして独立。「ビジネス数学検定」で国内最上位を獲得し、企業研修などで「数学的思考がいかに仕事に役立つか」を説いている。著書に、『こまったら、“数学的”に考えよう。』(すばる舎)、『10戦9勝の数字の使い方』(小学館新書)などがある。 https://youtu.be/QOyfhR_fSPE

THE21 購入

2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

面白法人カヤックが実践する「すごいブレスト」とは?

『THE21』編集部

法律のプロが教える「問題発見力」の磨き方

伊藤真(弁護士/伊藤塾塾長)

非正統派マーケターが導き出したUSJ成功への道

森岡 毅(ユー・エス・ジェイCMO)