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難局とは「経験値を上げるためのチャンス」だ!

2016年06月25日 公開
2023年01月23日 更新

森下一喜(ガンホー・オンライン・エンターテイメント社長)

 

乗り越えた後の「小さな楽しみ」を想像

同時に、「トラブルを楽しむこと」も重要だと森下氏。

「何か仕事でトラブルがあると、ネガティブなことばかり考えてしまいますが、すると、その課題をクリアすることに頭がいかなくなり、ストレスがたまる一方になります。だから、ネガティブな思考は一切やめて、楽しくなることを考えるようにしています。
たとえば、大きなトラブルがあったら、『こんな経験、なかなかできないよな。逆にラッキーなのでは?』とポジティブにとらえ直す。『ドラマが起きたね~』と考えることもあります。淡々とやった末に面白いゲームができたというより、途中、さまざまなドラマを乗り越えていたほうが、達成感は大きいでしょう。
このような考え方をすると、『課題をクリアしよう』という気になり、本当にクリアできれば、ストレスも吹き飛びます。いきなりそう考えるのは難しいかもしれませんが、ポジティブに考えた上で課題をクリアする経験を積むと、本当にそう思えるようになりますよ」

また、「乗り越えた後の楽しいことを思い浮かべる」ことも多いという。

「これはなんでも良いと思います。大きな目標を成し遂げた後のことでも良いですが、『これが終わった後のビールはうまいだろうな』というような小さな楽しみでもいい。そのほうが、リアルに感じられますから。
たとえば、起業する前のことですが、飲食店のエアコンクリーニングのバイトをしていたことがあります。真夏の店内に養生をして、密閉状態で行なうので、恐ろしい暑さのなかで作業をするんですよ。体力的にも本当につらいのですが、そのときは、『これが終わった後のビールはうまいだろうなぁ』とよく考えていました。すると、きつい仕事もビールをうまく飲むためにやっていると思えて、楽しくなってくるんです。
今も居酒屋でホッピーを飲んでいれば満足という安上がりな男ではあるのですが(笑)、日々の小さな楽しみでも、ストレスを減らす効果は十分あると思いますよ」

 

 

「メールより電話」が無用なストレスを回避する

「嫌なことを後回しにしないこと」も、森下氏が強く意識していることだ。

「クレーム対応などは後回しにしたくなりますが、後回しにしたところで、頭の隅には常にそのことがありますから、余計にストレスがたまるだけ。先送りにすることで、事態がますます深刻になることもあります。嫌なことは早めに解消するに越したことはありません」

部下からの重要な報告や、ミスがあった場合なども、すぐに携帯電話に直接電話してもらうようにしている。

「最近はこういう連絡をメールですることが増えているかもしれませんが、僕は社員に『メールでなく、電話して』と伝えています。メールだと、相手の真意がわからないし、こちらの真意も伝わりにくいからです。『なんで俺の言っていることがわからないんだ!』となれば、余計なストレスをためる元になると思うのです。それに、『こういう言い方をしたら、どう思うかな?』とか『これで怒っていることが伝わるかな』と文面をあれこれ考えていると、無駄に時間がかかってしまいます」

 

ストレスは、まったくないより適度にあったほうがいい

世に出したゲームに対して、ユーザーから厳しい批判を浴びることもある。中には的外れな中傷もあるが、そういう声は気にならないのだろうか。

「自分たちが作り上げたゲームは自分の子供のようなものですから、確かに良い気持ちはしません。でも、人にはそれぞれ価値観がありますから、万人受けするのは不可能。それに、声を気にして、ユーザーに迎合するようなゲームを作っていたら、大きなヒットは生まれません。これからも、酷評を恐れず、チャレンジするほうを選び続けていきたいですね」

一方で、適度なストレスはあったほうがいいと話す。

「ストレスがないと、周りの人の抱えるストレスがわからなくなりますから、思いやりが持てなくなる。それに、適度なストレスがないと、それを乗り越える達成感を味わえないので、生きていてつまらないと思うのです。だから、『成長するためには、たまにはこういうストレスを感じるのも必要だよね』などと考えることもありますね。ストレスはうまくつきあえば、自分のためになると思います」

 

 

【コラム】ゲームにも「ストレス」が必要!?

「適度なストレス」はゲームにも必要だという。
「ゲームの醍醐味は、目標を達成することにあります。たとえば、簡単に倒せる敵ばかりでは面白くない。『くそ~っ、なかなか倒せないぞ!』という難敵がいて、ストレスを感じるからこそ、ようやく倒した時の達成感を味わうことができるわけです。しかし、あまりに敵が強すぎると、大きなストレスがかかりすぎて、ゲームから離れてしまいます」
いかに適度なストレスをかけ続けるか、そのコントロールを緻密に行なっているそうだ。
「一つの基準は顧客単価。たとえば、パズドラでは、魔法石というアイテムを使うとガチャを引いたりスタミナを回復したりできます。難易度の高いダンジョンを登場させたりすると、魔法石が売れ、顧客単価が上がるのですが、単価が上がり過ぎたら、『ストレスを与えすぎている』と判断し、単価を下げるように調整しています。また、お金をかけて強いモンスターを得ても、パズルがうまくならないと進められないようにもしています。ストレスをお金で解消できるとなると、達成の重みがなくなり、楽しくありませんからね」

 

 

《『THE21』2016年6月号より》

著者紹介

森下一喜(もりした・かずき)

ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社代表取締役社長CEO

1973年、新潟県生まれ。ソフトウェア開発会社を経て、2002年にガンホー・オンライン・エンターテイメント㈱として現事業を開始すると同時に「ラグナロクオンライン」を国内でプロデュース。現在社長業の傍ら、開発部門統括エグゼクティブプロデューサーとして、スマートフォンゲームから家庭用ゲームまで、あらゆるゲーム開発の製作総指揮をとる。代表作は、スマートフォンゲーム「パズル&ドラゴンズ」、家庭用ゲーム「パズドラZ」、PCオンラインゲーム「ラグナロクオンライン」など。

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