2016年02月11日 公開
ネット書店が隆盛し、町中から書店がなくなってきている昨今。しかし、書店には、本を買うこと以上に得られるものがある。書店にはいったい何が眠っているのか。一昨年自らの書店をプロデュースした、クリエイティブディレクターの嶋浩一郎氏にお話をうかがった。
本を買うために書店に行くことを面倒だと感じる人は少なくありません。多忙なビジネスマンの中には、「ネットで買ったほうが速い」と考える人も多いでしょう。そこには、時間のない環境であるがゆえの「無駄を省く」価値観があります。
しかし、無駄というものはそれほど悪いものでしょうか。
買いたい本が決まっているのなら、検索性でも迅速性でもネット書店のほうが明らかに優れています。一方、書店では、ふと目についたもの、時には後々「なぜこんな本を買ったのだろう?」と思うようなものを購入してしまうことがありませんか? そうやって持ち帰った予定外の「ムダ知識」にこそ隠れた意味があります。それは、企画力や発想力の源になり得るのです。
「アイデアはあさっての方向からやってくる」と私は考えています。一見、無関係な者同士が組み合わさったとき、アイデアは生まれます。
たとえば、「フクロウの羽根」と「新幹線のパンタグラフ」は一見まるで無関係。しかし、捕食の際に羽音を立てないというフクロウの羽根のしくみが新幹線に応用され、騒音軽減に役立てられているそうです。
目の前の仕事や自分の専門分野のみを見ていると、こうしたアイデアは生まれません。何かと何かを組み合わせることで新しいものが生まれ、その組み合わせに意外性があるものほど斬新で切れ味のいいものになります。つまり、一見無駄な情報の引き出しをいかにたくさん持っているかが、イノベーティブな発想力の源になるのです。
更新:11月22日 00:05