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相手に応じて「第一印象」を使い分けよう

2016年02月20日 公開

和田裕美 (営業コンサルタント)

「相手の第一印象」でキャラクターを使い分ける

 この手法は、和田氏自身が営業という仕事をする中で少しずつ学んだものだという。

 「私はもともと愛想の良いタイプなのですが、その『素』のままで臨むと軽く見られることもしばしば。都合良く使われるだけ使われて成果は得られない、といった経験もしました。ニコニコしているだけでは駄目なのだ、とわかってからは、自分の『見せ方』を考えるようになりました」

 その際に和田氏が重要視したのは「相手の第一印象」だった。初対面での相手の表情や反応を観察すると、フレンドリーに接するか、ものを申したほうがいいか、合わせ技でいくか……と、出方もおのずと見えてくる。

 「営業に限らず、現在も初対面のコミュニケーション全般でこれを実践しています。

 たとえば、若い方から『お会いできて光栄です!』とかしこまって話しかけられれば、相手の緊張がほぐれるような気さくな接し方を心がけます。

 逆に、高圧的な印象を受ける相手なら、礼儀正しさの中にも毅然とした態度で臨まなくてはなりません。キャラクターを演じ分けることは、お互いのパワーバランスを調整することにもつながると言えるでしょう」

 この作業は、誰もが日ごろ無意識のうちに行なっているはず

だ、と和田氏は語る。「人はたいてい、職場・家庭・友人の集まりといった場ごとに違った顔を見せているものです。それは、自分を表現するうえでの持ち札のようなもの。それらを場当たり的にではなく、効果を考えて使うことが重要です。

 複数あるカードを戦略的に使い分けることにより、第一印象は意図的に『作る』ことができるのです」

 

親しみの湧く営業を目指そう

 一方、こうした工夫に対して、「演じている・嘘をついている」といった居心地の悪さを感じる人もいる。

 「その違和感は、目的意識を持つことで解消します。なんのために第一印象を工夫するのか──それは言うまでもなく、好感と信頼を得るためです。この目的とメリットを認識していれば、納得感も生まれるでしょう。

 大事なのは、感情で判断しないこと。たとえばあなたが、カレーのお店を作るとしましょう。しかし、『自分は辛いカレーが好き』という理由だけで味を決めたりはしないはずです。世の中のニーズにも応え、甘いカレーが求められていればそれを出すのがプロ。

 第一印象を作ることもこれと同じです。自主的にキャラクターを選択すれば、それは嘘でも演技でもありません」

 そうした自主性を持つことは、自然な態度を保つうえでも重要だという。「納得感のないままだと、不自然さが相手に伝わります。すると互いに落ち着かず、距離を縮めることができません」

 もう一つよくある失敗が、良く思われようとして「完璧」を目指そうとするパターンだ。

 「一分の隙もなく格好良くキメよう、と努力するのは得策ではありません。俳優やモデルでもないかぎりそんなことは不可能ですから、頑張っても疲れるだけでしょう。

 そもそも人は完璧なものには親しみが湧きません。むしろ、自尊心が傷ついて不快な場合もあります」

 相手の自尊心を損なうのは、営業マンにとって最大の失策。ほどよい親近感を感じてもらう程度がちょうど良い。

 「言わば『AKB48戦法』ですね。綺麗だけれども、親しみやすさを保つことが大事です。といっても、わざとスキを作る必要はありません。

 身だしなみに気を配り、相手に合わせた第一印象が作れれば十分。それが、良いコミュニケーションをする源となるはずです」

 

取材・構成 林加愛 写真撮影 永井浩

 

『THE21』2015年12月号

著者紹介

和田裕美(わだ・ひろみ)

営業コンサルタント

京都府出身。外資系教育会社においてプレゼンしたお客様の98%から契約をもらうという「ファン作り」営業スタイルを構築し、世界142カ国中2位、日本第1位の成績を収め、女性初・最年少の支社長となる。その後同社の日本撤退に伴い独立。執筆活動のほか、講演・セミナーを国内外で展開中。近著『成約率98%の秘訣』(かんき出版)。

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