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どんなに仕事が多くても「テンパらない」技術

2016年01月08日 公開
2023年05月16日 更新

西多昌規(精神科医/医学博士)

テンパったときの応急処置とは?

 このように、自分にも周囲にもダメージを与えてしまうテンパりは、どうすれば抑制できるのでしょうか。

 最も簡単なのが「ひと休み」。仮眠を取れば睡眠不足が軽減できますし、殺気立った部屋を出てトイレで頭を冷やせば、気持ちが落ち着きます。

「タイムリミットを設ける」という方法も有効です。もうこれ以上耐えられない、というときに「あと十五分だけ頑張ろう」というふうに、終わりを意識すると乗り切れることが多いのです。

 ちなみに、十五分は人間の集中力の波の最小単位と言われています。この区切りで一息入れると落ち着きを取り戻しやすく、再び仕事に戻ったときリズムに乗りやすくなります。

 「呼吸」を活用するのもお勧めです。深呼吸をすると副交感神経が活性化し、リラックスできます。息を吸ったまま止めて腹部にぐっと力を入れ、内臓全体に圧力をかける「バルサルバ法」も試してみましょう。何度か繰り返すと、効果的に副交感神経を高めることができます。副交感神経がリラックス時に働くのなら、テンパりの真っ最中にいるときは当然、交感神経が活発になっています。

 ここで即効性を発揮するのは、歩き方やしぐさ、話すスピードなどを全体的にスローにしてみること。落ち着きを取り戻せるだけでなく、周囲に「テンパってるなあ」と思われずにすむ効果もあります。

 

どんなときでも「テンパらない人」に

 このように、とっさにテンパりを抑える方法は多々ありますが、究極の理想は「どんな状況でもテンパらない人」になることです。

 まず、過去の経験に照らし合わせて「自分がテンパりやすい状況」をリストアップしてみましょう。「部下が一斉に確認を求めてきたとき」「反対意見を言われたとき」などを列挙して、次にそうなったらどうするか、と考えておくとよいでしょう。

 そして、同僚とは日頃から笑顔で気持ちよく接すること。日々のコミュニケーションが円滑なら、いざというとき周囲のサポートも得やすく、一人で抱え込まずにすみます。もし抱え込んだとしても、「周囲は味方だ」と思えれば、大変な中でも安心感があるはずです。

「完璧を期しすぎない」ことも重要です。自分への要求水準が高すぎると少しのミスで動揺してしまうからです。「大事なところさえ押さえておけば、少しぐらい間違ってもいい」というふうに、鷹揚に構えましょう。

 このように、「テンパり防止術」はセルフコントロール術でもあります。これはビジネスマンとしても、一人の「大人」としても欠かせないスキル。いかなるときも動じないメンタルの持ち主は、「デキる人」という評価だけでなく、周囲からの確かな「信頼」も得ることができるでしょう。

 

(『THE21』2015年10月号より)

(取材・構成:林加愛)

著者紹介

西多昌規(にしだ・まさき)

精神科医

1970年、石川県生まれ。96年、東京医科歯科大学卒業。国立精神神経医療研究センター、ハーバード大学研究員、自治医科大学講師などを経て、現在はスタンフォード大学客員講師。『「テンパらない」技術』(PHP文庫)ほか著書多数。

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