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「藻谷浩介と行く食の福島」講演ツアー同行取材ルポ 後編

2016年01月09日 公開
2023年01月12日 更新

藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)

福島県産品の風評被害と闘う生産者・加工業者の現状

 

前編より続く》

 

[郡山布引高原風力発電所]
震災後注目される自然エネルギー

 午後からは、別の講演に向かった藻谷氏に代わって、馬場氏が案内役を務める。藻谷氏とは、のちほどまた合流することになる。

 バスは、猪苗代湖の南にある郡山布引高原風力発電所に向かう。今回のツアーのテーマである「食」からは外れるが、原発事故後の電力を考えるうえで注目される施設だ。

 バスは猪苗代湖の東岸を南下し、猪苗代町から再び郡山市に入る。郡山市は奥羽山脈の太平洋側と日本海側にまたがって広がっているのだ。猪苗代湖南岸は湖南町という地区で、かつては白河街道が通り、福良宿などの宿場町が発展した。しかし、今では郡山市内で最も高齢化が進んでいる。

 いくつかの集落を抜けて布引山の山道に入ると、車窓から見える紅葉が美しい。山の上は台地状の高原になっており、畑が広がっている。馬場氏によると、水が少ないため、ダイコンが名産だそうだ。その畑の間に巨大な風車が33基立っている。国内最大級の風力発電所・郡山布引高原風力発電所だ。

 

 運営会社であるジェイウインドサービスの秦智之氏がツアー参加者に説明をしてくれた。同社はJ-POWER(電源開発)の100%子会社だ。

「ここは1,000m級の標高があり、平均して冬は秒速7m、夏でも秒速3mの風が吹いています。2000年に風向・風速調査を開始して、2005年に着工、2007年に運転を開始しました。出力は6万5,980kW。3万5,000世帯ぶんの消費電力量を発電しています。発電した電気は全量、東京電力に買い取ってもらっていて、20年契約をしています。風車の耐用年数も20年です」(秦氏)

 支柱となるタワーの高さは64mあり、FRP(繊維強化プラスチック)製のブレードの長さは35.5m。ドイツのエネルコン社製のものを小名浜港で陸揚げしたが、細い道を運搬するのは難事業だったようだ。曲がり切れないカーブは、その内側を整地して、道路からはみ出て運んだりもしたという。

 設置に当たっては、地権者から土地を借りている。タワーの基礎部分が置ければいいので、それ以外の場所は農地として使い続けることができる。太陽光発電のように地面を覆ってしまわないのは利点の1つだ。また、夜間でも風さえ吹いていれば発電し続けられるのも、太陽光発電にはないメリットである。

 風車は騒音があまり出ないように設計されているうえ、住民がいない場所なので、たとえ発生したとしても問題は少ない。コンピュータ制御によって、普段は風を正面から受ける方向を自動的に向いているが、あまりに強風だと風に対して垂直方向を向くようになっているので、なぎ倒される心配もないということだ。東日本大震災でもトラブルはなかったそうだ。

 

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著者紹介

藻谷浩介(もたに・こうすけ)

〔株〕日本総合研究所主席研究員

1964年、山口県生まれ。日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)、米国コロンビア大学留学などを経て、現職。2000年頃より地域振興について研究・調査・講演を行なう。10年に刊行した『デフレの正体』(角川新書)がベストセラーとなる。13年に刊行した『里山資本主義』(NHK広島取材班との共著/角川新書)で新書大賞2014を受賞。14年、対話集『しなやかな日本列島のつくりかた』(新潮社)を刊行。

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