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エシカルであることは当然のこと。そのうえで、選ばれるブランドに

2015年11月25日 公開
2016年04月06日 更新

白木夏子(HASUNA代表)

 

 ――もう一つの「品質」については?

白木 長く使っていただけるように、壊れにくく、着け心地がよいことを重視しています。とくに結婚指輪や婚約指輪は、世代を超えて受け継がれていくものですから。

 ――お客も、エシカルであることより、デザインや品質でHASUNAを選んでいると感じられますか?

白木 そうですね。創業当初は「エシカルだから」ということでお買い上げいただくお客様もいらっしゃいましたが、今では2次的な要素になっています。やはり、品質とデザインで選んでいただいていることを実感しています。

 ――出店戦略については、どのように考えていらっしゃいますか?

白木 1号店は南青山にオープンして(2011年)、現在は表参道に移っています。この辺りはファッションの中心地であるとともに、自由を感じさせる、クリエイティビティが高い街です。自由な発想でデザインをするために最適な街だと感じています。

 伊勢丹新宿店の中に出店した(2013年)のは、ブランディングのためだけではなく、売上げ世界一の百貨店で、世界一のお客様やバイヤーが集まるからです。彼らからのフィードバックが大いに参考になります。

 また、名古屋にも店を出しています(2012年)。これは私の出身地だからということもあるのですが、東京とはお客様のタイプが違うので、やはり勉強になっています。

 これから海外にも展開したいと考えています。とくにアジアの市場は魅力的です。ASEANの人口は約6億人、中国、インドは12億~13億人もいますし、可処分所得が高い層がこれからさらに増えていきますから。

 ――その他に、今後の展開として考えていらっしゃることはありますか?

白木 まずは会社規模を5倍、10倍にして安定させること。また、ジュエリーに限らないブランドビジネスの展開も準備しているところです。

 ――どんな事業に参入されるのか、楽しみにしています。今日はありがとうございました。

 

 

HASUNAを支える「白木氏のジュエリーへの想い」

 白木氏がエシカルジュエリーのブランドを立ち上げたいと話したとき、ジュエリー業界の人たちは「無理だ」と言ったそうだ。ジュエリーの素材は流通過程でさまざまな産地のものが混ざってしまうからだ。エシカルな素材だけを使うためには、ARMのような団体の認証を受けたものを仕入れるか、産地と直接取引をするしかない。

 そこで白木氏は、インタビュー中にも出てきたルワンダの他、ベリーズやミクロネシア、パキスタンなど、世界中の生産者のもとを訪れ、関係を築いてきた。

 なぜ、そこまでできたのか? もちろん、社会問題の解決への想いやそれまでの経験、能力などがあってこそだが、ジュエリーへの想いも一つの大きな要因ではないかと今回の取材で感じた。

 白木氏の母親はデザイナーで、その影響で幼い頃からジュエリーへの興味があったという。また、父親とは化石を掘りに行ったりもしており、鉱物の図鑑を見て何億年も昔のことを想像するのが好きだったそうだ。HASUNAのジュエリーが表現している世界観は、そうした白木氏の生い立ちに由来している。そのことが芯となって、HASUNAは一層輝いているのだろう。

 

《写真撮影:まるやゆういち》

 

著者紹介

白木夏子(しらき・なつこ)

〔株〕HASUNA代表取締役

1981年、鹿児島県生まれ。愛知県育ち。2002年からロンドン大学キングスカレッジにて発展途上国の開発について学ぶ。卒業後、国連人口基金ベトナム・ハノイ事務所とアジア開発銀行研究所でインターンを経験し、投資ファンド事業会社勤務を経て、09年4月に〔株〕HASUNAを設立。人と社会、自然環境に配慮したジュエリーブランド事業を展開。11年、世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ日本の若手リーダー30人に選出。13年、世界経済フォーラム年次総会に出席。

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