2015年10月21日 公開
2015年10月22日 更新
マイナンバー制度はさまざまな問題を抱えています。先述しましたが、私が何より懸念するのは、「見える化」によって監視社会が促進されることです。このまま制度が進んでいけば、監視カメラ網や携帯電話のGPS機能などが連動して、個人の一挙手一投足までが記録され、データ化されていくことでしょう。情報化社会の中でそれは便利な一面でしょうし、事件の性格によっては犯罪捜査の面でもそれなりに役立つかもしれませんが、それだけで収まる保証はありません。
「見える化」で何もかもを「見る」のは、システムを運用する側です。言わば“神の目”を持つことになる人々が現われる。言論や思想の統制に使われないほうが不自然でしょう。人間の尊厳に関わる問題です。今から番号を割り振られる私たちはまだしも、これから生まれてくる子供たちは、番号があることが当たり前の社会となってきます。果たして「人間らしさ」とはなんなのか──私たちにできることは、それを忘れないようにすることだけです。
取材・構成:編集部
(『THE21』2015年10月号より)
更新:11月23日 00:05