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マイナンバー・広がる格差と「監視社会」への道

2015年10月21日 公開
2015年10月22日 更新

斎藤貴男(ジャーナリスト)

 

これから私たちにできることとは?

 マイナンバー制度はさまざまな問題を抱えています。先述しましたが、私が何より懸念するのは、「見える化」によって監視社会が促進されることです。このまま制度が進んでいけば、監視カメラ網や携帯電話のGPS機能などが連動して、個人の一挙手一投足までが記録され、データ化されていくことでしょう。情報化社会の中でそれは便利な一面でしょうし、事件の性格によっては犯罪捜査の面でもそれなりに役立つかもしれませんが、それだけで収まる保証はありません。

「見える化」で何もかもを「見る」のは、システムを運用する側です。言わば“神の目”を持つことになる人々が現われる。言論や思想の統制に使われないほうが不自然でしょう。人間の尊厳に関わる問題です。今から番号を割り振られる私たちはまだしも、これから生まれてくる子供たちは、番号があることが当たり前の社会となってきます。果たして「人間らしさ」とはなんなのか──私たちにできることは、それを忘れないようにすることだけです。

取材・構成:編集部
(『THE21』2015年10月号より)

著者紹介

斎藤貴男(さいとうたかお)

ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。イギリス・バーミンガム大学大学院修了(国際学MA )。日本工業新聞記者、週刊文春記者などを経てフリーに。著書に、『プライバシー・クライシス』(文春新書)、『住基ネットの<真実>を暴く―管理・監視社会に抗して』(岩波ブックレット)、『戦争のできる国へ―安倍政権の正体』(朝日新書)など多数。

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