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マイナンバー・広がる格差と「監視社会」への道

2015年10月21日 公開
2015年10月22日 更新

斎藤貴男(ジャーナリスト)

 

ビッグデータ活用に色めき立つIT業界

 マイナンバー制度は、2013年3月に国会に提出され、わずか2カ月の審議で可決・成立されました。来年から始まる制度は、当面、社会保障と税、災害分野に限定されます。ですが、スタート前から早くも「共通番号(マイナンバー)法」等の改正案が閣議決定され、国会に提出されています。改正法案は、「金融分野、医療等分野等における利用範囲の拡充」をうたっており、「預貯金口座へのマイナンバーの付番」「予防接種履歴の地方公共団体間での情報共有」が強く推し進められています。他にも、旅券事務、自動車検査登録などへの活用も検討されています。

 今後、民間でも利用できるようになることで個人番号を使う場面が増え、それによって個人番号と個人情報や行動がひもづけされていくのは恐いことです。

 従来の日本の番号制度は、住基ネットの住民票コードをはじめ、基礎年金番号、旅券番号、運転免許証番号など、分野ごとでバラバラで、番号自体にはほとんど意味はありませんでした。「マイナンバー」という“マスターキー”が誕生したことで、今後は運用する側にとっては個人の行動履歴を名寄せし、把握・記録していくことが容易になったのです。いわゆる「ビッグデータ」への利活用も予定されています。個人一人ひとりのほとんど人格までが丸裸にされ、それぞれのデータに合った商品やサービスを絶えず“お勧め”され続けなければならない時代が、すぐそこまで来ています。

 楽天の三木谷浩史社長が率いる経済団体「新経済連盟」は、今年4月、「マイナンバー制度を活用した世界最高水準のIT国家の実現に向けて」という提言を安倍政権に提出。5月には、自民党経済好循環実現委員会のヒアリングで、総額150兆円の経済効果をうたうマイナンバー活用策を提示しており、IT業界を中心にその利用範囲は広がっていくことになるでしょう。しかし、利便性や生産性ばかりが追求・強調され、そこにいるはずの人間の存在が見えなくなっているように思えてなりません。

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中小・零細企業にとっては負担が増えるだけ >

著者紹介

斎藤貴男(さいとうたかお)

ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。イギリス・バーミンガム大学大学院修了(国際学MA )。日本工業新聞記者、週刊文春記者などを経てフリーに。著書に、『プライバシー・クライシス』(文春新書)、『住基ネットの<真実>を暴く―管理・監視社会に抗して』(岩波ブックレット)、『戦争のできる国へ―安倍政権の正体』(朝日新書)など多数。

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