2015年09月09日 公開
2021年08月02日 更新
3つ目のポイントは「人材育成の方針が明確であること」です。人材育成の方針は2つあり、1つは「一番下の役職からスタートすること」と、もう1つは「社内で登用すること」です。たとえば、現在、社長を務めるトッド・ジョーンズ氏も、1980年にレジ担当としてキャリアをスタート。複数の部門や役職を経て、2008年に社長に就任しました。
そして、4つ目の「働く人々の士気につながる従業員ベネフィットが用意されていること」において、多くのベネフィットの中でもパブリックスの最大の特徴は、社員持ち株制度です。パブリックスは非上場企業です。所定の条件をクリアすれば、従業員がパブリックスの株式を購入できます。
トッド・ジョーンズ社長は、地元紙『ザ・レイクランダー』(2014年10月10日号)のインタビューに答えて次のように述べています。
「社内から登用するパブリックスの文化と共に、社員持ち株制度があることで、パブリックスの成功に寄与しなければならないという意識を生み、自社の業績に対する責任感を生んでいます。当社の成功の鍵はアソシエーツ(社員)の存在です。彼らが成功の源泉であり、当社が他社と異なる唯一の点です」
拙著『パブリックスの「奇跡」』(PHP研究所)では、上記の組織づくりの4つのポイントを軸に、パブリックスのこれまでをまとめました。以下では、パブリックスの最新状況をお話しして終わりたいと思います。
パブリックスの出店エリアには、低価格を強みとするウォルマートやアルディ、自然食スーパーマーケットのホールフーズ、複数の地元スーパーマーケット・チェーンなど、さまざまなタイプの競合が乱立しています。その競争環境の中で、長期にわたり好調を維持してきました。
パブリックスは、スーパーストアといわれる大型店舗(平均店舗面積3900平方メートル)を主要フォーマットとしていますが、それ以外にも中南米出身の消費者向けのスーパーマーケット「ファボール」、自然食スーパーマーケット「グリーンワイズ」も出店しています。最近では、都市型小型スーパーマーケットも実験中です。
店内では、「エプロンズ・シンプルミール」というミールソリューション・プログラムを実施しています。ミールソリューションとは、メニュー決定から片づけまでの食事の問題に対する解決策を提供するサービスを意味します。パブリックスでは、半調理品の提供、メニュー提案、料理の仕方の教える料理教室の実施など、さまざまな方法でソリューションを提供しています。
低価格をウリにする競合に対しても、価値訴求で対抗しています。プライベートブランド商品の開発や、「1個買うと2個目を無料サービス」などを行なうほか、「常にウォルマートが最安値とは限らない」というキャンペーンを展開するなど、安さのイメージづけにも取り組んでいます。
更新:11月22日 00:05