2015年07月29日 公開
2023年02月01日 更新
中国人ビジネスマンは、自分の損得に関することはとてもシビアに考えます。いくらお金持ちであっても、無駄に高い買い物をしたりはしません。無駄遣いをしたことを知人に知られると、いくら金持ちでもバカだと思われてしまい、メンツがなくなるからです。
中国では、価格に比べて性能が良い商品のことを、「性価比(シンジャービー)が高い」と言います。中国人は、高品質・高価格な商品ではなく、あくまで「性価比が高い」商品を買うのです。
この「中国人ホワイトカラー層の性価比へのこだわり」をうまく利用して成功している会社があります。あのスターバックス(中国名:星巴克)です。
スターバックスは、アメリカ、イギリス、中国など世界中の多くの国で「MSR(My Starbucks Rewards) Program」という会員制度を運用しています(残念ながら、日本にはまだないようです)。MSRの会員になると、店舗でコーヒーを飲むたびにポイントが溜まり、そのポイントに応じて「Welcomeレベル」「Greenレベル」「Goldレベル」とランクが上がり、「Buy one get one券」「無料アップグレード券」などが贈呈されるという仕組みです。
世界中で運用されているこの仕組みですが、中国のスターバックスではあえて、アメリカと1カ所制度を変えています。それは「入会費」。アメリカでは入会費無料ですが、中国では入会費として、あえて88元(約1,600円)取っているのです。
もちろん、入会費の元がすぐ取れるように、入会後すぐに使える特典として、アメリカでは提供していない「Buy one get one 券」が3 枚ついています。カフェモカTall サイズ(30 元/ 杯)なら3 杯飲めば、入会費88元の元が取れるようになっています。
ただしスターバックスの本当の狙いは、あえて入会費を有料にすることで、「中国人の性価比へのこだわり」を利用して売上げを増やすことにあるのです。もし入会費が無料であれば、街でコーヒーが飲みたいと思っても、近くにスターバックス以外のカフェがあればそこに入ってしまうでしょう。
しかし88元払って有料でMSRに入会している以上、コーヒーを飲めば飲むほど特典をもらえて元が取れる「性価比の高い」スターバックスなら、少し歩いてでも行こうと考えるのです。
このように中国人には、大阪のおばちゃんのように「お値打ち」が大好きな人が多いのです。
(初出『THE21』2015年1月号より)
更新:12月10日 00:05