新人にとって「配属」は非常に大きな関心事。しかし会社としては、特殊な専門職や特別なコネ入社などを除けば、個人の能力やスキルに関係なく、極端に言えば、ただばらまいて配属しているだけです。ですから、「○○に配属になるとエリートコース」などと考える必要はありません。
最初に配属されるのは、日々、業務を回していかなければならない現場。そして、現場のトップは課長クラス。評価をするのは、その課長です。人事部も調整程度のことはしますが、現場のことは現場の人間にしかわかりません。
そこで大切になるのは、課長をトップとしたチームの一員として、周囲と協力しながら効率良く業務を回せること。つまり、「協働」できるということです。
そのためには、もちろん、実務力が必要です。加えて、課長に信頼されることが重要になります。
どんな上司の下につくかは運ですが、日本の組織では、評価者である課長や、一緒に仕事をする仲間と、うまく連携しながら働くことが出世のポイントです。
管理職に登用され、課長になると、上位職である部長から評価を受けることになります。そこでのポイントは、「現場のトップとして、日々の業務が円滑に回るようにマネジメントできているか」「部下の兄貴分として現場から信頼されているか」といったことです。
ただ、現場の部下から支持されている課長が必ずしも出世するわけではありません。現実的には、上司である部長から引き上げられるかどうかのほうが大きく影響します。部長と課長の間には現場の実務が介在しないだけに、より人間関係の比重が大きくなります。
部出世レースから脱落したら長に引き上げようと思ってもらうためには、その部長個人がどういう評価基準を持っているのかを把握し、その期待に応える必要があります。上司の意向を汲んで、その上司が働きやすいように働ける。これが「偉くなる人と長く一緒に仕事ができる能力」です。
役員や部長は、「法務知識の豊富な社員」「営業力がある人」などではなく、「○○さん」という固有名詞で指名します。上層部で「はないちもんめ」をやっていると考えてください。人事部は、要求する人が重なったときなどに調整するだけです。
課長・部長であるミドル層から役員であるトップ層へと昇進できる人は、ほんのごくわずか。多くの人は50代で役職定年を迎えます。それ以前に、課長にもなれない人も増えています。
先述したように、伝統的な日本企業では、40歳くらいで管理職に登用されるかどうかで、その後の評価がある程度決まってしまいます。リカバリーは難しい。また、40歳頃になると、人生の折り返しの地点なので「このままでいいのだろうか?」と心が揺れる人も多い。
私は、この状態を「こころの定年」と名づけています。しかし、会社からの評価は得られなくても、また会社人生に迷いが生じても、諦めることはありません。
日本の組織は、エモーショナルな面が強く、共同体性を持っています。職場の周囲の人たちから「あなたがいてよかった」という評価を得る働き方もあるのです。みんなが敬遠する地下倉庫の整理を他の人のぶんまできちんとやり通して、感謝されていた人を私は知っています。
社外で誰かの役に立つという生き方もあるでしょう。要は、自分に向いたことをしてイキイキと働くことが解決になるのです。
更新:11月22日 00:05