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<著者に聞く>今なぜ「ビジネスプランニング」が重要なのか?

2015年05月29日 公開
2023年02月01日 更新

斉藤剛(IGPI経営共創基盤パートナー)

ある日突然起きる「ダイナミックな変化」を見抜く

過去に、多くの日本の携帯電話メーカー、PCメーカー、TVメーカーが再編淘汰を繰り返し、また撤退してきた。その分野に限らず、数多くのインダストリーで、俗にいうスマイルカーブの現象が表面化してきている。

スマイルカーブについて、PC業界の変遷を例に説明しよう。

PCの完成品を製造していたメーカーは儲けが出なくなり、製造コストが安いEMS(製造請負企業)に製造を委託、EMSが巨大化して規模の利益を享受すると、ますます製造をしていては儲からなくなるということが起きていた。一方で、ユーザーにとってPCの使用品質を規定するコアコンポーネント(CPUなど)を作っているインテルなどは儲かり、ユーザーとのインターフェースを抑えたマイクロソフトが莫大な利益を得ていた産業全体の利益分布の構図を想像してほしい。

これをスマイルカーブと呼んでいる。川の流れにたとえると、「川上のコンポーネントプレーヤーと、川下のサービスプラットフォームを持つものだけが儲かり、川中のプレーヤーは誰も儲からなくなる現象」といえる。

このスマイルカーブは過去の現象ではなく、むしろ、ビッグデータ活用やAIの進展によって、もっともっと広いインダストリーで進む。自分たちの事業ドメインがある日突然、儲からなくなってしまうのだ。

皆さんは、自分の属するインダストリーにおいて、どのような要因で、どこからスマイルカーブの現象が現れるのか、自社の事業ドメインは大丈夫か、を見極めているだろうか?

この問いに対して、本質を外さずに答えられる人がかなりいるという実感を持ったことは残念ながらない。

このスマイルカーブの問いだけでなく、技術進化、グローバル化、国内の質的変化は、さまざまな事業への大きなインパクトをもたらす。個々人が、「適切な論点を設定して、それに仮説を持てるかどうか」とは全く無関係に、劇的な変化は起きてしまうのだ。

このことからも、なぜ、大きな変化がどこでダイナミックに起きていくのか? という産業レベルでの変化・進化を見抜く、そして事業のプランに落とし込めるだけの「リテラシー」は持っておきたい、誰もがそう思うのではないだろうか。
 

他の本には書かれていない「リアルなエッセンス」を一冊に

タイトルこそ「リアル・ノウハウ」としているが、この本は、ただちに使える「チェックリスト」や、さまざまな「フレームワークを整理して紹介」しているわけではない。そもそもそのようなものは覚えていても、現実に「生き死に」を分かつような判断の際には、全くというほど使いものにならない。

また、ビジネス「啓蒙書」でもない。我々がさまざまな局面に対峙してきている中で、肝に銘じたこと、考え抜いてきたことの中から、とくに世の中の本では書かれていないエッセンスを記載したつもりである。

裏話になってしまうが、実は、この本の出版には、かなりの時間がかかっている。意図したわけではないのだが、3年ほどかかっている。

執筆者のひとりの望月愛子(IGPIディレクター/公認会計士)と共に、「事業計画についてのノウハウ」について書こうと、初期的な企画を作ってから3年。さすがに3年も経つとその間に色々なことが起こる。グローバル製造業を中心に五重苦と言われた頃は、再生と成長を同時に支援するプロジェクトが多かったり、また昨今では、ベンチャー企業の創業の支援をIGPI自身が本格化させたりもしている。IGPIグループ傘下のバス会社5社でのオペレーションノウハウの蓄積も5年前とは比較にならない。昨今のガバナンス高度化について関与をすることを通じても、5年前には書けなかった内容を本書には盛り込むことができたのではないか、と感じている。

ただ、残念ながら、さらっと読めるノウハウ紹介書ではないため、読みにくさを感じる読者もいるに違いない。ただ、自ら、考え、構想を組み立て、組織を牽引することを目指す事業会社の方々にとって、ビジネスプランニングに関する「リテラシー」を少しでも高めるための貢献ができればと思っている。

また、事業に対する「本質的に重要な視座や視点」は何か、あるいは、ビジネスプランニングに必要な「思考と表現の言語」を鍛えたいと感じている金融セクターの方々やプロフェッショナルの方々にも手に取ってもらいたい。
 

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