2015年01月09日 公開
2023年01月30日 更新
「すぐやる」ことに関して、私が孫社長から一番影響を受けた考え方は、「10秒考えてわからないものはそれ以上考えても無駄」という姿勢です。
やってみればわかりますが、10秒間1つのことを考え続けるのは案外難しいものです。「昼食に何を食べるか」ということさえ、自分の頭という閉鎖された中だけで考えていたら、10秒も思考が続きません。
これはどんな問題でも同じです。たとえば「ある会社を買収するか、しないか」について、ひたすら時間をかけて考え続けたところで無駄。「買収するとしたら、資金調達はどうするか」「ローンにするか、証券化か」などと問題をブレイクダウンしていくか、判断に必要な権限と情報量を得るために今すぐ動くかしなくては、問題は前に進まないのです。
ソフトバンクでは「検討中」という言葉が使われません。万一、孫社長の前で「その問題は検討中です」などと言おうものなら、こっぴどく怒られます。考えてわからないなら、必要な情報を集めるための調査を始めるべき。「その件に関しては、他社動向を調査していて、その結果がいついつまでにわかります」といった答えが即座にできなくてはならないのです。
私は今、いくつかの会社の社外取締役や政府の委員会の委員を務めていますが、そこでこの孫社長方式の「検討中は許さない」というルールを広めるようにしています。すると、それだけで組織の意思決定のスピードが驚くほど上がります。皆さんもぜひ、試してみてください。
また、これはよく言われることですが、「結論から言え」ということも、孫社長とのコミュニケーションで常に求められることの1つです。
ただ、ここで誤解してほしくないのは、孫社長はどんなことに関しても、今すぐに決断すればいいとは思っていないということです。あえて「決めないことを決める」こともまた、孫社長の強みの1つなのです。
実際、どんなに情報を集めても「評価できない」ケースも当然、あります。そんなとき孫社長は、あえてギリギリまで決めようとしません。たとえば発注先を決めるに際して、部下がいくら、「ここはC社でいきましょう!」などと提案しても、まったく動こうとしないのです。
もちろん、そのことにより時間のロスも生まれますし、部下の手間も余分にかかります。それでも孫社長は「まだ決める時期ではない」と考えたら決めない。そのために部下の手間が増えるのは必要なコストと考え、ギリギリまで最適な選択を追求し、一番いいタイミングで決めるのです。
人は「すぐやる」ことが難しい一方で、「決めないと気持ち悪い」と感じる生き物でもあります。でも、そこで気持ち悪さに負けて拙速な決断をしてしまうこともまた、失敗の原因になるのです。
決断を急ぐのではなく、決断の成功率を高めるためにどうするか。その視点をぜひ、身につけてほしいと思います。
<掲載誌紹介>
<読みどころ>年末年始のあわただしい中、今ほど「仕事を速く終わらせなければ!」と痛感する時期はないのではないでしょうか?
そのためには、何事も「すぐやる」ことが不可欠。 にもかかわらず、なぜ、なかなか仕事に手を付けられないのか、仕事がはかどらないのか。
経営者から弁護士、アナウンサーまで各界の達人たちに、「仕事をすぐやる」コツをうかがいました。 ぜひ参考にしてください。
更新:11月24日 00:05