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柴田励司の「疲れない仕事術」―プライドを手放そう

2014年12月03日 公開
2023年01月30日 更新

柴田励司(Indigo Blue代表取締役会長)

仕事に振り回されずコントロール下に置く

 一方で、自分が主体となり仕事をコントロール下に置くことの重要性も指摘する。

 「疲労の原因は、物事を自分でコントロールできないことです。男性なら、奥さんや彼女の買い物につきあって疲れたという経験があるでしょう。次にどう動くかわからず、決定権もない。そのために、実際の稼働時間以上に疲れてしまうのです。

 仕事も同様で、疲れないポイントは仕事を“アンダーコントロール”にすること。これができるかどうかにかかっていると思います」

 仕事をコントロール下に置くことと、「I Work for You」の発想とは、一見、相反するように思える。しかし、「他人よりも自分が評価されたい」という気持ちがあるから、仕事をコントロ-ルできないのだと柴田氏は言う。

 「上司からたくさんの仕事を振られて困っているとします。それなら、上司に『いっぱいいっぱいです』と、相談すればいい。普通の上司なら、『仕事の割り当てに無理があったのだな』と気がつくはずです。それなのに、『査定に響く』『印象が悪くなる』と、評価を気にするから手に余るようになるのです。

 ついでに言うなら、このような些末なことで査定を低くする上司なら、何をやっても同じ。『自分で自分を評価する』という気概で、自分磨きをするほうが有益です」

 また、要領を得ない上司のもとで働く場合も、「自分のほうが優れている」と張り合わないことが仕事をスムーズに進めるコツだ。

 「タラタラとした会議は時間のムダ。そのような場は、往々にしてダメ上司が仕切っているものです。だからといってコントロールできないというわけではありません。質問力を鍛え、上司から次々と言いたいことを早く引き出せばいいのです。ここで『俺のほうが優れている』と見せつけてはうまくいきません。

 一方、自分が上司の立場なら、部下たちだけの会議に不安を感じる人もいるでしょうが、自分の欠席は、若手にチャンスを与えることになるのです。また、上司がいないほうがスムーズに会議が進むこともあります」

 保身を捨て、質問力を鍛えることは、朝令暮改型の上司にも有効だ。

 「コロコロと言うことが変わるように見えても、実は、変わっているのは表面的なことだけです。根本的なことは変わっていないはず。ここでも、上司が求める本質的なものは何かを引き出す質問力が求められます」

 ものわかりのいい素振りをするより、愚者として質問すること。このことを恐れてはいけない。

 この“自分”に囚われない姿勢は、取引先に対しても有効に働く。

 「先程、部下が失敗して、上司が自己保身から恐怖に囚われる例を出しました。このようなとき、部下が出した損害にどう対処するべきか。

 かつての私だったら、失敗した部下を呼びつけて怒鳴っていたでしょう。すると部下は萎縮する。怒鳴った自分にも後悔する。ネガティブなサイクルに陥ります。

 今の私なら、冷静になるよう気分転換します。その日の以降の予定をキャンセルして時間を空けることもあります。そして、お客様の損害に対して、自分はどうリカバリーできるのか。冷静に書き出すことで第一歩を踏み出せます」

 “自分”を手放せば、失敗したとしても、ポジティブなサイクルヘと軌道修正することができる。精神的に疲れることがないのだ。

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著者紹介

柴田励司(しばた・れいじ)

〔株〕Indigo Blue代表取締役会長

1962年、東京都生まれ。上智大学文学部英文学科卒業後、〔株〕京王プラザホテル入社。1995年、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング〔株〕(現・マーサージャパン〔株〕)入社。2000年。同社日本法人代表取締役社長に就任。2007年に退職したのち、〔株〕キャドセンター代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ〔株〕代表取締役COOなどを歴任。2010年、〔株〕Indigo Blueを設立し、代表取締役社長に就任。著書に『遊んでいても結果を出す人、真面目にやっても結果の出ない人』(成美堂出版)など。

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