2014年11月12日 公開
2023年05月16日 更新
<誰でも真似できる「8つの小さな習慣」>
習慣1
ワーク・ライフ・バランスは中長期で考える
成果を上げようと思うと、短期的にはワークに偏った生活になることもあるでしょう。そんなとき、ワーク・ライフ・バランスを意識し過ぎると、バランスを取ること自体が目的化する恐れがあります。そこで重要なのは、「時間軸をどう設定するか」です。
ハーバードのクラスメートの多くは、短期ではなく中長期という時間軸でワーク・ライフ・バランスを保とうとしていました。自分を高める必要があるときは、周囲やパートナーの協力を得て、短ければ数カ月、あるいはもう少し長い一定期間、仕事や勉強に集中するのです。ワーク・ライフ・バランスを論じるよりも、まずは前に踏み出してみる。バランスが崩れそうになったところで腰をかがめて踏ん張る。中期的にはバランスを崩さす前に進めるものです。
習慣2
ハンカチを持ち歩く
私は1年に1回、ハンカチを買い足すことをちょっとした楽しみにしています。基本的には人に見せるものではないので、少々遊び心のある柄や華やかな色を選ぶようにしています。ハンカチにこだわる理由は2つ。1つは、身だしなみとして持っておきたいから。もう1つは、忘れ物をしなくなるからです。
翌日のハンカチを前の晩に準備する習慣が身につくと、同時に他の持ち物やスケジュールを確認するきっかけになります。ハンカチを選ぶ楽しみがあると、翌朝の身支度も楽しくなる。身支度が前倒しになれば、生活が規則正しくなります。そして、パリっとしたハンカチは清潔感の象徴でもある。ふとした折に見えるハンカチのセンスもあなたの評価を高めるはずです。
習慣3
足元の身だしなみに気をつける
近頃のスーツやシャツは、廉価なものであっても、デザイン性とクオリティが格段に上がっています。それゆえ、身なりで大きな差が出るのは、ずばり「足元」。汚れた靴やかかとのすり減った靴は、それだけで相手に「できない」印象を与えがちです。
私は愛用するビジネスシューズを、2週間に1回、週末にまとめて手入れをしています。かかとの修理も定期的に行なうことで、靴の寿命を長持ちさせられます。街には靴磨きをしてくれるお店もありますが、私は自分で磨くことをお勧めします。野球選手がグローブを磨きながら魂を込めるように、ビジネスパーソンも靴を磨くことで仕事へのスイッチが入る。靴をきれいにする習慣には、外見の印象を上げるだけでなく精神的な効果もあるのです。
習慣4
仕事を離れたつきあいを大事にする
近年は、社内の飲み会を避ける人も多いようですが、マッキンゼー時代など海外にいた頃も、「飲みニケーション」は重要な交流の機会でした。そこで得た上司からのアドバイスは今でも私の財産です。
同じオフィスにいても、上司や先輩とコミュニケーションを取る時間は案外少ないもの。そもそも仕事ができる人ほど、実務的な連絡が多くなりがちです。その点、お酒の席では普段できない話題に及ぶことも多い。飲み会こそ、貴重なフィードバックをもらうチャンスでもあります。オフィスの外に出て、貴重な時間を共有することで、お互いの信頼関係が強まるのです。先輩や上司は自分の目線を高めてくれる絶好のメンター。積極的に後ろを追いかけて、良好な関係を築きたいものです。
習慣5
大事なことを「手書き」する
私はかばんの中に、いつも「自分ノート」を忍ばせています。過去を振り返ったり、アイデアを書き出したり、TODOリストを挙げたり……。コーヒーを飲みながら、思いつくままにペンを走らせると、モヤモヤとした引っ掛かりが消え、頭の中が整理されてきます。
また、1つの事象を長所と短所の両面から見ることにも役立つため、いろいろな気づきが生まれます。たとえば、仕事上の成果を書き出してみると、意外に頑張っていた自分に気づかされることがある。一方、成果が少なければ、その原因をあぶり出すことで、次の目標につなげられます。頭や心が混乱したときは紙に書き出してみる――。こうした内面の管理は、成果の最大化に大きな効果をもたらすでしょう。
習慣6
情報収集の前に仮説を立てる
インターネットの発達により、情報収集は信じられないほど容易になりました。しかし一方で、情報が多すぎる弊害もあります。納得いくまで調べようとするとキリがなく、またネット上の情報は玉石混交なので自分で有益な情報を取捨選択しなければなりません。そこで、ネットで調べものをする前に予め自分で結論を考えてみることが重要です。つまり、仮説を立て、その仮説を裏づける理由探しをするのです。たとえば、「明日は雨が降る」と考えたら、現在の空の様子や過去の気象データから、結論を言い切るための理由を集めます。仮説が間違っていることがわかったら、そこで軌道修正します。
問題が発生するたびに、検索して答えを探すクセがつくと、類似ケースがなければ解決できなくなってしまいます。同じように情報収集でも、最初に結論を出し、そこから材料を集める。そんな逆転の発想をぜひ身につけてください。
習慣7
徹底的に準備する
ゴールドマン・サックス、マッキンゼーのいずれにおいても、プレゼン慣れして見える人ほど、徹底的な準備を怠らないという共通点がありました。クライアントに向けたプレゼンだけでなく、社内のプレゼンでも繰り返し練習をする。自宅やデスクの前で小声で口を動かし、練習に励む。英語でのプレゼンなら、スクリプトを書いて暗記するほど読み上げる。質疑応答に備え、聞かれそうなことを準備する。できる人は、こんなふうに見えないところで準備をしているのです。
練習が生み出す、本番での好結果。そして、それが生み出す自信。その1つひとつを積み上げることで、さらに自信は深まっていきます。好循環の最初の一歩には隠れた準備があることを改めて見直したいですね。
習慣8
ホウレンソウは念押し型で伝える
ホウレンソウの基本は、上司に聞かれる前にすること。「例の件はどうなっているの?」と催促されてからでは、自信を持って答えることが難しくなります。「もう少しまとめてから……」という気持ちを抑え、7割方であっても翌朝のホウレンソウをお勧めします。朝イチのオフィスは静かで、ホウレンソウに最適。翌日に中間報告をすれば、早めの軌道修正が可能です。さらに、上司の期待値を超えたスピード感はあなたの評価を高めます。
相談の際は、念押し型で行なうことも大切です。「私は○○だと思うので、○○で進めていいでしょうか?」と、自分の答えに承認を得る形で相談すると、上司はイエス・ノーの判断だけで済む。そうしたスピード感もまた上司との信頼関係を強めるはずです。
戸塚隆将
(とつか・たかまさ)
シーネクスト・パートナーズ〔株〕代表取締役
1974年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックスにて、日米欧アジア企業のM&Aアドバイザリー業務に従事。ハ-バード経営大学院(HBS)にてMBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーに転じ、多国籍企業の戦略立案、組織改革、事業譲渡・提携などの戦略コンサルティングを手がける。2007年、シーネクスト・パートナーズを設立。企業のグローバル事業開発およびグローバル人材開発を支援するほか、HBSの教材を活用した英語プログラム「CLUB900」を開発・運営している。著書に、ベストセラー「世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?」(朝日新聞出版)など。
<掲載誌紹介>
2014年11月号
おかげさまで『THE21』は今号で30周年を迎えることになりました。これもご愛読いただいている皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
さて、その記念号である今月号は、原点に返って「習慣」をテーマにしています。
今、活躍している著名ビジネスパーソンの方は、若い頃からどんな習慣を大事にして、今に至っているのか。お読みいただき、「あ、これはいいかも」というものがあれば、ぜひご自身の習慣にも取り入れていただければと思います。