2014年08月01日 公開
2022年08月08日 更新
安倍政権を見るうえで最も注目すべきは何か――安倍政権の経済政策・アベノミクスが今注目されている。田原総一朗氏は、安倍政権の正念場は第3の矢にかかっていると語る。
※本稿は『THE21』2014年8月号より一部抜粋・編集したものです。
安倍政権を見るうえで最も注目すべきは何か。それは日経平均株価です。国民の関心事は経済だからです。
経済政策以外にも、安倍政権はさまざまな政策を打ち出しています。たとえば、集団的自衛権の問題が大きな話題となっている。でも、国民の90%はその中身をわかっていないと思いますよ。そんなことよりも国民にとって大事なのは、景気がよくなるかどうかです。
中曽根政権や小泉政権も夕カ派でしたが、安倍政権ほど右寄りの人たちが手放しで称賛する政権はかつてなかった。でも、だから政権が安定しているわけではない。日経平均が1万4千円を割れば、与野党から安倍下ろしの声が湧き上がってくるでしよう。
2012年12月に民主党から自民党へと政権が代わり、アベノミクスが始まりました。その結果、日経平均は1万円を割っていたところから急上昇し、2013年12月には1万6千円台にまでなった。2014年はいよいよ2万円の大台かという期待も高まっていた。
ところが現在はどうか。1万4千~1万5千円台でもみあっています。これはアベノミクスの第3の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」に疑問符が投げかけられているからです。これまでは右肩上がりで来たけれども、1万6千円から下がってしまい、投資家は今、迷っているところだと思います。
正念場は今年秋から冬にかけてだと私は見ています。ちょうどこの頃に、来年10月に消費税を8%から10%へと上げるかどうかの判断を下すからです。第3の矢が不発で、消費税は増税となれば、日経平均は今よりも下がって1万4千円を割る可能性が高い。
率直に言って、アベノミクスの成長戦略には期待が持てません。やろうとしていることの中には実現したら素晴らしいものがありますが、掛け声だけで実現できていないものが多い。農協や医療の改革がほんとうにできるのか。社外取締役設置の義務化も、結局、できなかった。掛け声だけだという失望が投資家に広がると、日経平均は下がります。
では、成長戦略への失望が広がって日経平均が下がり、安倍下ろしが起これば、また政権交代が起こるのかといえば、それはないでしょう。今の野党は批判をするばかりで対案がないからです。民主党はカイエダノミクスを打ち出さないし、日本維新の会はハシモトノミクスを打ち出さない。石原慎太郎さんが経済政策を論じているのを聞いたことがありますか。
国民は「批判だけ」にうんざりしています。批判ではなく、アベノミクスに代わる成長戦略を期待しているのです。もし野党がきちんとした経済政策を提示できるなら政権交代も夢ではないかもしれませんが、現状ではどこにもそんな野党がない。
それどころか、共産党と社民党以外の野党の政策はほとんどが自民党と同じ。違いがありません。みんなの党や日本維新の会は集団的自衛権に賛成しているわけです。“第二自民党”と言っていいでしょう。
みんなの党や日本維新の会が分裂したのは、そんな状況に野党議員もいらだっているから。野党再編を目指す動きもありますが、旗印になるものが何もないのだから、うまくいくわけがない。
そこで、政局の焦点となるだろうと考えられるのが自民党内でのポスト安倍争いです。アベノミクスが失敗することになれば、自民党内からも安倍下ろしが始まり、次の首相を誰にするかという動きが活発になるでしょう。
いろいろな有力候補がいると思いますが、私が個人的に期待しているのは野田聖子さんです。初の女性首相となったらかなり面白いじゃないですか。
私が彼女に注目する理由は2つあります。1つは、小泉政権時代、郵政民営化に賛成した議員が多かった中、毅然として反対を唱えたこと。それで離党しています。もう1つは、安倍首相が進める集団的自衛権に対しても批判的なこと。これだけ気骨のある政治家は少ないので、期待したいと思っています。
小泉進次郎さんは、かなりセンスがいいと感じます。ただ、まだ若いので、すぐにというわけにはいかないでしょう。
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更新:11月23日 00:05