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[時間の使い方]机の上で唸っていてもアイデアは湧いてこない

2014年05月12日 公開
2022年12月26日 更新

前刀禎明(リアルディア代表取締役社長)

前刀禎明/時間の使い方
写真撮影:まるやゆういち

1日24時間、と時間は誰もに平等に与えられている。限られた時間の中で、日々の仕事をこなし、プライベートも充実させるとなると、「時間の使い方」が重要となってくる。

「仕事が早い人、遅い人」「アイデアが浮かぶ人、生まれない人」そこには、どのような違いがあるのだろうか。数々のマーケティングを成功させた経験を持つ前刀禎明氏に話を聞いた。

※本稿は、『THE21』2014年5月号総力特集より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

オンとオフを切り分けないから、アイデアは生まれる

「仕事が遅い人」の中には、ルーティンの仕事はすばやくこなせても、企画立案やアイデア出しが苦手で、いくら時間があっても足りない、という人もいるだろう。日々の仕事を効率化しても、「考えること」に時間がかかっていては意味がない。

アップルコンピュータでiPodminiなどのマーケティングを成功させ、現在はテレビコメンテーターやビジネスマンの能力開発などを行なう前刀禎明氏は、まさに「考えるプロ」。どうすれば、効率的にアイデアを発想することができるのだろうか。

「一番いけないのは、『さあ、企画を考えるぞ』などと時間を決めて、部屋にこもって考えたりすることです。そうして机の上で何時間も唸ったり、片っ端から情報をあさったりしても、いいネタなど出てはきません。

あるいは、アイデアを出すための『ブレーンストー・ミング』も、はっきり言って無駄な時間です。事前に持ち寄ったアイデアを検討するならともかく、まったく新しいアイデアが会議室の中から生まれるわけがないのです」

代わりに前刀氏がお勧めするのが、「オンとオフを切り分けない」という時間の使い方だ。

「アイデアというのはやはり、日常のふとした瞬間に訪れるものです。だから、常に頭のどこかに仕事のことを置いておき、ヒントを探すようにする。すると、たとえばランチの最中、あるいは通勤の途中などにふといいアイデアが生まれるのです。

ただ、最近はむしろ『オンとオフのメリハリをつけよう』という考え方が流行っているようです。私はそれを否定するものではありませんが、せっかくの発想のチャンスを逃すのはもったいないことです。それにもし、『仕事を忘れて趣味を楽しまなければ』と考えているとしたら、それはかえってストレスになってしまいますよね」

前刀氏がこうした「オンとオフを切り分けない」時間の使い方をするようになったのは、アップル時代の経験もあるという。

「アップル時代には、とにかくスケジュールがぎっしり詰まっていて、週明けに自分のスケジュールを見て、思わず気持ち悪くなったこともあるほどです(笑)。

だから自然と、アイデア出しも情報収集も、普段の生活の中でやるしかなかったのです。たとえばiPod miniが発売されたときは、電車の中で使っている人を数えて「やっぱりこの色が人気なんだな」などと肌感覚で情報を感じ取ったりしました。ただ、実はそのほうが、市場動向の統計データなどよりよほど役に立つのです。

スマートフォンを例に挙げれば、最近、アンドロイド携帯のシェアが高まっているというデータがあります。そこで、電車内で観察してみると、やはりiPhoneのほうが多い。さらに見てみると、アンドロイド携帯を使っている人は使い方がぎこちなく、あまり使い慣れていないように見える。

つまり、ガラケーから仕方なく乗り換えた人が多いのではないか。そう考えると、いくら増えたからといって、iPhoneユーザーとアンドロイドユーザーを同列に考えるべきではないのではないか……そんな仮説が成り立つわけです」

アイデア発想だけでなく、情報収集の時間がないと悩む人も多い。前刀氏は2年ほど前から、『めざましテレビ』で『さきつぶ』という情報コーナーを担当している。ニュースを独自の視点から解説することで人気だが、情報収集には何か、独自のノウハウがあるのだろうか。

「それが、たいしたことはしてないんですよ。『さきつぶ』を始めてから、月~金は毎日3時起き、4時にテレビ局の車でピックアップしてもらい、自分の出番が来るのが6時16分くらいという毎日を続けています。そして本番を終えてから、置いてある新聞を全紙、ザーツと流し読みする。基本的にはそれだけです。

それでも、気になる情報は自然と『引っかかってくる』ものです。問題意識があれば、点と点がつながるような感じで、情報が自然と頭に入ってきて、アイデアも生まれてきます。

情報収集に関しても、『さあ、情報を集めるぞ』などと意気込むのではなく、必要な情報は自然に目に飛び込んでくるものだと考えるほうが、時間もかからず、ストレスもないと思います。ただ、そのアイデアを何らかのかたちで残しておくことは重要ですね。私は思いついたらすぐに、LINEでスタッフに連絡を入れたりしています。

一番よくないのは、情報収集・整理マニアになってしまうことです。最近はさすがにスクラップブックを作るような人も減っていると思いますが、各種のアプリを使って情報を収集・整理しようとする人も多いようです。では、いったいそのうちどのくらいの情報があとで必要になったかを考えてみれば、おそらくそのために使った時間はほぼ無駄になっていると気づくはずです」

 

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