2013年08月08日 公開
2023年05月16日 更新
ただ、そうはいっても、元気な親に遺言書を残してもらうのは非常に難しいことです。私の父は、誰に言われたわけでもないのに、遺言書をしっかり残していましたが、こんな例は非常にレアケース。たいがいの親は、「自分は元気で、まだまだ死なない」と思っているものです。もし、遺言書を書いてほしいなどと切り出せば、「お前は俺に早く死んでほしいと思っているのか!」などと機嫌を損ねてしまうということも大いにあるでしょう。
最近は、遺言の他、残された家族への思いを綴ったり、暗証番号類を記録したりするエンディングノートもあり、こちらのほうが勧めやすいかもしれませんが、いきなり言われたら、やはり親も良い顔はしないでしょう。
どうすれば遺言書を書いてもらえるのでしょうか。一見遠回りのようで有効なのは、親が家族の歴史の話をした時に、しっかり聞いておくことです。
親も60歳を過ぎれば、「子供に○○家や財産をどう引き継ぐか」という意識を多かれ少なかれ持ち始めるものです。すると、子供に、自分の知っている家の歴史を伝えるようになります。私の母も、「ある地域に藤川という苗字の家がたくさんいて、そこがルーツだ」などと家族の歴史を長時間話していました。また、近年は、定年退職後に家系図づくりをする人が増えているようですが、これも「自分の家のルーツや自分が生きた証を後世に残したい」と考えている現われでしょう。
こうした話を親がすると、子は聞き流してしまいがちですが、ちゃんと聞いておいたほうがいいでしょう。すると、いつしか自然に、遺産などの話も出てくるものです。そのときに、遺言書やエンディングノートの話をしておけば、親も気分を害することなく、それらを残すことを真剣に考えてくれるでしょう。
なお、独身者の相続問題で、もう1つ考えられるのは、自分自身の財産をどう相続するかです。さすがに30代、40代のうちに考えるのは早すぎですが、誰に残すかは、どこかの時点で考えておいたほうが良いと思います。まだまだ寿命には遠く、冷静に考えられる60代くらいがちょうどいい時期と言えるかもしれません。
独身を貫き通したとしたら、あなたの遺産は、遺産相続順位が配偶者・子・親の次である、兄弟姉妹や甥・姪などが継ぐことになります。もし継がせたくない人がいるなら、「姪の○○にすべての遺産を相続する」などと特定の人を遺言によって指定しておくことが必要です。
最近は、自分の所属している団体などに寄付する人も多いようですが、これらも遺言書で指定することは可能です。お世話になったからと、入所していた老人ホームなどに寄付するケースもあります。自分の築いた財産ですから、どのように承継するか、早めに考えておくのも悪くないでしょう。
<“ひとりへの備え”POlNT>
冷静に考えられるうちに自分の財産をどうするか決めよう
[総力特殊・1分で考える技術]
「頭の回転が速い人」は「深く考える人」である ◆小川仁志(哲学者)
時間がないときこそ幅広く、深く考える ◆浜 矩子(同志社大学大学院教授)
言葉で考えるのではなくイメージで捉える ◆山本真司(経営コンサルタント)
いつでも出せるように「考え方」をストックする ◆安田道男(俺の株式会社常務)
記憶の数を増やして、記憶を複合させる ◆おちまさと(プロデューサー)
先入観を持たずに物事に真正面から向き合う◆谷原 誠(弁護士) ほか
更新:11月21日 00:05