THE21 » マネー » 売上100億円でも自慢にならない 経営者が見るべき本当の数字

売上100億円でも自慢にならない 経営者が見るべき本当の数字

太田朝子(経営アドバイザー)

売上100億円でも自慢にならない 経営者が見るべき本当の数字

「黒字なのに、お金がない」――多くの経営者が抱える、この矛盾はなぜ起きるのか。利益とキャッシュの違いをわかりやすく解説してもらった。

※本稿は、太田朝子 著『売上が下がっても利益が増える 会社のお金の残し方』(日本実業出版社)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

利益とお金が噛み合わない?

ここからは、「黒字なのに通帳の残高が減る」理由をお伝えします。読み終えるころには、損益計算書を「キャッシュ目線」で読めるようになります。

ここまで、仕分のルールと運用の仕方をお伝えし、正しい数字の土台は整いました。経営において本当に大切なのは、この整えた数字を「どう読むか」です。

ところがここで、多くの人に「利益が出ているのに、なんでお金が減っているんだ⁉」という謎が立ちはだかります。税理士さんに確認しても「ほら、『損益計算書』を見てください。ここにちゃんと利益が書いてありますよね」といわれ、あなたは「うーん、そうですね...」といぶかしげにその書類を見つめます。

たしかにそこには「利益」が載っています。でも通帳を見ると、残高は去年の今ごろよりずっと減っています。利益と通帳の残高が、どうにも噛み合わない。

この不思議な現象の謎を解き明かしていきます。

損益計算書は、テストの「解答用紙」のようなものです。ただし、解答用紙の価値は「点数」だけではありません。点数の上げ方が書いてあるところに、本当の役目があるのです。

まずは、損益計算書が「何を示す書類なのか」を、もう一度整理しておきましょう。

 

損益計算書は利益を増やすための「分析ノート」

損益計算書には1年間(一定期間)の売上・経費・利益が表としてまとまっています。

わかりやすくするために、学園祭でジュースを販売する例で考えてみましょう。たとえば、学園祭でジュースを1万円分売ったとします。材料費やコップ代に8000円かかったら、残りが儲け。つまり2000円が利益です。この形が、損益計算書の基本です。

実際の損益計算書には、さらに経常利益などの項目が出てきますが、「売上−経費=利益」とシンプルにとらえれば、まずは十分です。

ただし、この算数で終わらせてしまっては、もったいない。

なぜなら、損益計算書は、点数(利益)を確認する「解答用紙」であると同時に、次のテストで点数を上げるための「分析ノート」でもあるからです。もし、同じジュースを売って自分たちの2000円より1000円多い3000円儲けたクラスがあったらどうでしょう。

「どこが違った?」を分析すれば、次の学園祭では、もっと利益を出せます。経営もまったく同じ。数字を見直せば、次の手が見えてくるのです。

思い出してください。学生時代のテスト。点数を見て一喜一憂し、答案をカバンに突っ込んで終わり...。そんなこと、ありませんでしたか?

恥ずかしながら、私は常習犯でした。でも、間違えた問題を見直して、苦手分野を潰し、ミスのパターンを分析していたら...きっと神童と呼ばれていたことでしょう(完全にタラレバですが)。

経営も同じです。損益計算書を見て「売上が伸びた」「利益が出た」で終わってしまうと、経営は行き当たりばったり。最後は「神頼み経営」になってしまいます。神童にはなれなくても、せめて神頼みからは卒業したいものです。

特に危険なのは、「売上」だけを追いかけることです。

「うちの会社、売上100億円あるんだ!利益はゼロだけどね」

これ、自慢になっていませんよね。

会社の売上=キャッシュではありません。大切なのは「売上」より「利益」。いくら解答欄を埋めても、正解できなければ点数は伸びないように、どれだけ売上が大きくても、利益が減っていたら、それは「経営の方向」がズレているサインです。

売上を上げるために大幅な値引きをしたり、過剰なサービスをして「売れば売るほど赤字になる」ような現場もあります。

テストは全部間違えても0点止まり。でも、経営にはマイナスがあります。

キャッシュは利益があってこそ。キャッシュを生み出すのは売上ではなく「利益」です。この原則を忘れてはいけません。

損益計算書は、点数を見るための解答用紙です。しかし、本当の役割は「なぜ、その点数になったのか」を、読み解くことにあります。

「なぜこの売上だったのか」「お金の使い方は適切だったか」「利益を増やすためには、どうすればよかったのか」を考えることで、経営の改善点が見えてきます。解答用紙を見直して勉強法を変えれば点数が上がるように、損益計算書を見直せば利益も伸ばせます。

だからこそ、損益計算書は、次の利益を生むための「経営分析のツール」なのです。

【図解】利益こそが最大の成果

プロフィール

太田朝子(おおた・あさこ)

経営アドバイザー

年商4億円の中小企業で借金10億円を10年で実質ゼロにした元取締役経理部長。立教大学法学部卒業後、フリーの研修講師として企業や大学で登壇。2010年に嫁ぎ先の部品加工会社に入社。当時の会社は、リーマン・ショックの影響で、10億円以上あった売上が半分以下に激減。「借金10億円」「純利益率−24%」「自己資本比率7%」の瀕死の状態。経営・経理の知識ゼロから、請求書やレシートを1枚ずつ洗い直し、埋もれていた会社の実態を数字でつかむ。数字と現場の両面から再建を進め、売上は4億円台のまま、コロナ禍に借金を実質ゼロに。会社を退く2024年には「純利益率11%」「自己資本比率45%」まで成長。経営とは「会社の真実を見つめること」、経理は「経営の土台をつくる司令塔」、個人は「幸せを感じるためにお金を使おう」をモットーに、企業と個人向けに「仕分」のノウハウを伝授中。

THE21の詳細情報

関連記事

編集部のおすすめ

「読んで面白い決算書」の注目企業3選

近藤哲朗(「図解総研」代表理事),村上茂久(ファインディールズ代表取締役)

「フリー・キャッシュフロー」から見えてくる、ソフトバンクの超積極的投資

石島洋一(公認会計士)

「百分率損益計算書」で見えてくる、セコムとアルソックの違い

石島洋一(公認会計士)