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難しい会計用語は覚えなくていい? パン屋でわかる決算書の仕組み

太田朝子(経営アドバイザー)

難しい会計用語は覚えなくていい? パン屋でわかる決算書の仕組み

漢字だらけの会計資料に苦手意識はないだろうか。経営判断に必要な4つの書類を、わかりやすく解説してもらった。

※本稿は、太田朝子 著『売上が下がっても利益が増える 会社のお金の残し方』(日本実業出版社)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

漢字の羅列も怖くない

さて、これから「残念な決算書」を修正して、会社の未来を導く「経営の地図」に変えていく方法をお伝えしていきます。

でも、その前に、会計資料の全体像を整理しておきましょう。

「えっ、待ってください。会計資料って『貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)』『損益計算書(そんえきけいさんしょ)』...あの呪文みたいな漢字の羅列ですよね。もうやめてくださいよ」

そんな声が聞こえてきそうですが、安心してください。

見た目の圧は強くても、中身は意外とシンプル。いわば「難しい言葉を使っていばっている先生」みたいなものです。大まかなイメージさえつかめれば、経営の味方になります。

 

面倒くさい書類カルテットの登場

中小企業の経営者が押さえておくべき会計書類は、次の4つです。

・販売費及び一般管理費内訳書(販管費内訳書)
・製造原価報告書(※製造業のみ)
・損益計算書
・貸借対照表

登場しました、「面倒くさい書類カルテット」。

会計に詳しい人からは「え、普通は貸借対照表からでしょ?(でもそこで挫折するんだよね...)」というツッコミが入りそうですが、ごもっともです。

ただ、私の経験上、中小企業にとって本当に大切なのは、最初の2つ。

「販管費内訳書」と「製造原価報告書」です。

「なにそれ?もっと聞いたことがないんだけど?」という人もいらっしゃるかもしれませんが、この2つはとても身近な数字が並んだ書類なので安心してください。

なお、販管費内訳書について、1つ補足です。この本では、わかりやすさを重視して、販管費内訳書は1つの書類として扱います。ただ本来は、損益計算書の「販管費」を詳しく示した明細です。いわば、損益計算書の一部を虫めがねで拡大したものだと考えてください。

そしてここまで何度も「正しい数字を確保しましょう」とお伝えしてきましたが、この本でいう「正しい数字」で特に重要なのは、まさにこの2つの書類の数字です。この数字が正しければ、自ずと他の書類の数字も正しくなります。

理由はシンプルです。

この4つの書類は別々に見えて、実は1本の流れでつながっているからです。書類の細かい説明は、のちほどにして、まずは全体像をパン屋さんの事例でつかみましょう。

 

パン屋さんの事例で見る「4つの書類の流れ」

あなたがパン屋さんを始めるとしたら、どのようにお金を管理するでしょうか?

まずは、「①つくる」工程です。

パンをつくるために必要な小麦粉・砂糖・調理器具にかかる費用、人件費、光熱費などの経費をまとめます。これこそが、製造原価報告書です。ここを把握しないと「1個100円で売ったら、実は120円かかってました!」という悲劇が待っています。

なお、商品ごとの細かい原価は後回しで構いません。まずは「パンをつくるのに、全部でいくらかかっているのか」を知ることが大切です。

パンは焼いただけでは、ただの趣味。売らなければ商売になりません。そこで、次に「②売る」工程に移ります。売るためにも、お金が必要です。

そこで、つくったパンを売るために必要な店舗の家賃・包装紙・販売スタッフの人件費などの経費をまとめます。これが販売費及び一般管理費内訳書(販管費内訳書)です。

ここを見落とすと「おしゃれな紙袋に全部利益が吸い込まれてた!」なんてことにも。そうならないために、トータルの経費(パンづくりの経費+パンを売るための経費)を上回るように、パンの値段を決めます。

ここまで来たら、いよいよ開店です。開店したら売上と経費を整理して、「③いくら儲かったかを確認」します。このときに使うのが損益計算書です。

そして、パン屋さんを開店して無事に1年が経過したとき。パン屋さんに、「④今、何が残っているかを確認」してみましょう。

厨房には、オーブン、冷蔵庫、調理器具。まだ使っていない小麦粉や砂糖などの材料もあります。冷凍庫の中には、明日、焼くためのパン生地も入っています。お店を見回すと、パン棚、トレー、包装紙。レジの中には現金。銀行の口座には売上金が入っています。さらに、お店を開店するときに銀行から借りたお金、親から借りたお金。これは、まだ返せていません。

これらをまとめて、「左側=持ち物」「右側=ずっと返さなくてもよいお金と、返さなくてはいけないお金」に分けて整理したものが貸借対照表です。

どうでしょう。一見バラバラに見える4つの書類。実は「つくる→売る→利益→残す」という1本の流れでつながっています。

そして、この流れからわかるように、スタートは「つくる(製造原価報告書)」と「売る(販管費内訳書)」です。この2つの書類の数字が正確でなければ、妥当な値決めも、利益の見極めもできません。

つまり、この2つの書類の数字を正確に出し「正しい経費の分類」ができなければ、決算書は見かけは立派でも、中身は「残念な決算書」のまま終わってしまうのです。

【図解】パン屋さんでみる会計書類

プロフィール

太田朝子(おおた・あさこ)

経営アドバイザー

年商4億円の中小企業で借金10億円を10年で実質ゼロにした元取締役経理部長。立教大学法学部卒業後、フリーの研修講師として企業や大学で登壇。2010年に嫁ぎ先の部品加工会社に入社。当時の会社は、リーマン・ショックの影響で、10億円以上あった売上が半分以下に激減。「借金10億円」「純利益率−24%」「自己資本比率7%」の瀕死の状態。経営・経理の知識ゼロから、請求書やレシートを1枚ずつ洗い直し、埋もれていた会社の実態を数字でつかむ。数字と現場の両面から再建を進め、売上は4億円台のまま、コロナ禍に借金を実質ゼロに。会社を退く2024年には「純利益率11%」「自己資本比率45%」まで成長。経営とは「会社の真実を見つめること」、経理は「経営の土台をつくる司令塔」、個人は「幸せを感じるためにお金を使おう」をモットーに、企業と個人向けに「仕分」のノウハウを伝授中。

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