THE21 » キャリア » 60歳以降のキャリアを充実させるために「50代のうちに始めておきたいこと」

60歳以降のキャリアを充実させるために「50代のうちに始めておきたいこと」

2026年03月31日 公開

西尾太(人事コンサルタント)

60代のキャリア

60代以降も充実したキャリアを築くには? 人事のプロである西尾太氏に「キャリアの棚卸し」の重要性や、必要なスキルや経験値を身につけるための「社内転職」の方法について話を聞いた。(取材・構成:塚田有香)

※本稿は、『THE21』2024年3月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

自分を客観視するには第三者の意見を聞く

ミドルの強みになりやすい「マネジメント力」の図式化

キャリアの棚卸しをする際は、これまでの仕事を振り返り、「自分ができること(得意なこと)」と「苦手なこと」を書き出していきます。自分で考える作業も必要ですが、自身を客観視するのはなかなか難しいので、ぜひ上司や同僚からフィードバックを受けることをお勧めします。率直に話せる関係の相手であれば、良いところと改善すべきところの両方をざっくばらんに指摘してくれるはずです。

「自分には特筆するほどの強みはない」と思っている人も多いのですが、社会に出てから20年、30年と経験を積んできたミドルなら、若手にはない専門性やスキルを備えているはずです。

例えばマネジメント力は、ミドルの強みになりやすいスキルです。これは管理職を経験しなければ身につけられない力ではありません。仕事を効率良く進め、納期までに求められる成果を出す「タスクマネジメント」は、どんな職種や立場でも必要とされます。

協調性を発揮して周囲と良好な関係を築きながら、自分で主体的に考えて行動する「ヒューマンマネジメント」も同様です。管理職の経験があれば、ヒューマンマネジメントに加えて人材育成力も身についているはずです。

ビジネスパーソンにとっての成長とは、「タスクマネジメント×ヒューマンマネジメント」の面積を広げ、組織への影響力を大きくしていくこと。自分の強みがわからないという人は、まずはマネジメントスキルをチェックしてみるといいでしょう。

そこに「リーダーシップ」と「リスクマネジメント」が加われば、影響力はより拡大します(右下の図参照)。リーダーシップとは、政治経済や市場動向など幅広い情報を踏まえたうえで、組織の3年後や5年後のビジョンに向けて戦略を策定し、実行する力です。この戦略策定力を備えた人材は少なく、組織の戦略が作れる人は社内転職でも社外転職でも貴重な人材として高いニーズがあります。

また、情報漏洩やハラスメントなど、リスク要因を適切に管理する力も、今の時代には欠かせないスキルです。

多くの人と関わりながら仕事をしてきたミドルなら、コミュニケーション力や人脈力も培われているはず。「同期に役員がいるから、ちょっと話を通してくるわ」「あの会社の部長とはつきあいが長いから、今度紹介するよ」と言えるのは、ミドルならではの強みです。そんな人は周囲からも頼りにされ、どのチームでもなくてはならない存在として評価されます。

このようにキャリアの棚卸しをすれば「自分はこれができる」というものが見つかるはずです。

 

60歳以降のキャリアから今やるべきことを逆算する

定年後から逆算して「社内転職」の計画を

キャリアの棚卸しに加えて考えておきたいのが、「60歳以降のキャリア」です。60歳や65歳で正社員としての定年を迎えたあとも、今の会社で再雇用社員として働くのか。それとも他社で顧問やアドバイザーとしてやっていきたいのか。あるいは独立や起業を目指すのか。先のキャリアをイメージすることで、50代のうちに今の会社で何をすべきかも見えてきます。

例えば、営業として経験を積んだ人が、定年後は営業コンサルタントとして独立したいなら、自分が持つ知識や情報を体系化して人に伝えるスキルを確立することが必要です。そのためには、部門外同職種異動によって新たな製品群を担当することで、「どんな商材を扱う場合もこうすればうまくいく」という営業の法則を見出せるかもしれません。

または地域異動をすることで、都市部と地方における営業戦略の立て方の違いを体系化できるかもしれません。60歳以降のキャリアから逆算すれば、社内転職の計画も立てやすいはずです。

 

社内転職を叶えたいなら人事とうまくつきあおう

社内転職を望むなら、人事とのつきあいも大切です。人事異動の決定権を持つのは上司や所属部門の役員などですが、何らかの意見は言うので、仲良くしておいて損はありません。

人事に同期や個人的な知り合いがいれば、社内転職について相談してみるといいでしょう。

直属の上司に相談してもいいのですが、異動を希望するということは「今の部署にいたくない」という意思表示でもあるので、かなり勇気が要ります。「上司には相談しづらいのですが、実は別の部署に移りたいと考えています」と人事に相談すれば、話を聞いてくれるはずです。

その際は、相談内容を具体的に伝えてください。「私はこれからどうすればいいでしょう?」と聞かれても、人事は困ってしまいます。「私は○○の強みを活かして、□□の仕事で会社に貢献したいと思っています。それを実現するために△△に異動したいと考えているのですが、可能でしょうか?」といった聞き方をすれば、人事も具体的な回答やアドバイスを返せます。「自分はこうしたい」というビジョンと意志をしっかり持って相談するのがポイントです。

 

社内転職が難しいなら「週4勤務+副業」の交渉を

社内転職の希望が必ずしも叶うとは限りません。そもそも自分がやりたいことに合致する部署やポストが自社内に存在しないケースもあります。その場合は現在の部署で働き続けながら、60代以降のキャリアに必要なスキルや経験値を身につけなくてはいけません。

その手段として有力な選択肢となるのが、副業です。最近は週4日勤務や週3日勤務が可能な企業もありますが、こうした制度がなくても、「週に1日は副業をしたいので、週4日勤務にしていただけませんか。もちろん給与は現在の5分の4で結構です」と申し出れば、許可する会社は多いはずです。

最初に話したように、会社が一番嫌うのは現状維持でやり過ごそうとするミドルなので、「将来のために給与が減ってでも新しいことにチャレンジしたい」という意欲と行動力を示す社員がいれば、できるだけ応えようとしてくれるでしょう。

副業の注意点は、今の会社と競合しない企業や業態を選ぶことと、二重雇用は避けること。雇用先が複数あると社員の労務管理が難しくなるため、嫌がる会社が多いからです。副業をするなら、業務委託など他社に雇用されない形を検討しましょう。

社内転職をするにしろ、今の部署にいながらスキルアップするにしろ、50代のうちにリスクをとってチャレンジすれば、定年後の働き方や人生の可能性は大きく広がります。ぜひ皆さんも現状維持を抜け出し、自分自身を成長させていきましょう。

 

【西尾太(にしお・ふとし)】
人事コンサルタント。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエイターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。これまで1万人超の採用・昇格面接・管理職研修・階層別研修・人事担当者教育を行なう。

THE21の詳細情報

関連記事

編集部のおすすめ

ひろゆき「50代で伸びるのは、仕事に思い入れのない人です」

西村博之(実業家)

2028年にデイトレーダーが消える? AIが株式市場を凍らせる未来とは

鈴木貴博(経済評論家、経営戦略コンサルタント)

「充実した定年後を過ごせる人」が50代から準備していることとは?

三嶋浩子