2013年03月07日 公開
2023年05月16日 更新
《『THE21』2013年3月号より》
プレゼンの直前は緊張するものです。そこで、いつもの自分を取り戻す、つまり「セルフクリアリング」をすることが重要です。これにより、プレゼンの成功率はとても高まります。
ここでは、本番5分前にできる、セルフクリアリングの方法をご紹介しましょう。
まず、プレゼンの「目的」を再確認してください。
何のためにプレゼンをするのか? 自分のもっている情報を相手に「プレゼント(提供)」することが「プレゼン」です。プレゼンは相手のために行なうものなのです。
ですから、プレゼン後に相手がどのようになればいいのかを考えましょう。こちらの説明を理解してもらえればいいのか。あるいは、決断をくだしてもらいたいのか。ゴールは、プレゼンごとに異なります。
同時に、「相手が自分に何を期待しているのか?」「なぜ自分がこの話をするのか?」も再認識しておくことで、相手が受け入れやすいプレゼンができるはずです。
次に、話の「流れ」を確認しましょう。
本番直前の短い時間ですから、キーワードやキーフレーズを押さえながら、どこでどのような内容や事例を紹介するのかを、シンプルに整理するようにします。
その場で読み上げられるように、プレゼンの原稿を事前に一語一句きっちりと書いておかないと安心できない、という人も少なくないようですが、原稿を読み上げていると、緊張のあまり、どこを読んでいるのかがわからなくなってしまうリスクがあります。そうならないためにも、キーワードで押さえておくことが有効なのです。キーワードをみれば何を話せばいいのかが頭に浮かぶようにするのです。
原稿をプレゼンの場に持参するときは、マーカーなどで、キーワードが目につくようにしておきましょう。キーワードを大きめのフォントにするのもお勧めです。こうしておけば、緊張していても、伝えるべき内容と全体の流れを、その場でひと目で捉えることができるでしょう。
呼吸を整えることは、落ち着くためにとても有効です。
椅子に深く、ゆったりと腰かけて、背筋を伸ばしましょう。そして、鼻からゆっくりと息を吸い、お腹で一度ためてから、口からゆっくりと吐き出します。
吸った時間の2倍ほどの時間をかけて、ゆっくりと吐くのがコツです。不安や緊張も一緒に吐き出すように、身体の筋肉の緊張なども解いていきます。1~2分もすれば心が落ち着き、地に足の着いた感覚で話せるようになります。
また、プレゼンの直前は自分の「弱み」を気にしてしまいがちですので、「強み」に意識を向けるようにしてください。それが、本番での自信になります。
「強みなどない」と思われるかもしれませんが、何かあるものです。声が大きい、相手の目をみて話せる、笑顔で話せる、雰囲気を和ませられる、テーマに対する愛着が誰よりもある、といったことが、何か1つあればいいのです。自分のよさを活かしたプレゼンを行なうことを考えてください。
そして、本番では、自信をもって話しましょう。「上手に話そう」「完壁に話そう」ではなく、「相手にわかってもらおう」という姿勢で臨むのです。
「上手に話そう」「完壁に話そう」というのは、自分に意識が向いてしまっている状態です。「間違ったらどうしよう」などと考えて、自意識過剰になってしまい、結果的にアガってしまうのです。
相手に「プレゼント」をするという意識を忘れないでください。相手にいかに価値を渡せるかが大事なのです。
また、プレゼンを終えたあとには、「頑張った自分」をほめてあげるようにしましょう。
プレゼンの反省をする人は多い一方、うまくいったところを見つけて自分をほめる人は少ないようです。反省も大切ですが、反省ばかりでは自己嫌悪に陥ってしまい、プレゼンに対する苦手意識だけが残ってしまうことになりかねません。
プレゼンの上達には、「プレゼント」をする自分自身へのご褒美も欠かせないのです。
<取材構成:金澤匠>
(うしおだ・しげひこ)
人材開発コンサルタント
1964年、東京都生まれ。学習院大学経済学部卒業。「トウ・ビー・コンサルティング」代表。創造性開発、ビジネスライティングカ向上、プレゼンテーションカ向上、企画提案力向上、対人対応力向上、リーダーシップカ向上、問題解決力向上、トレーナ養成などの研修講師・プログラム開発などを実施。ビジネスパーソン向けの研修で、10000時間以上の講師登壇・のベ 10万人以上、100以上の企業・団体への指導実績をもつ。「楽しくて役に立つ参加型の研修」「一人一人の個性を生かし引き出す研修」がモットー。米国NLP協会認定マスタープラクティショナー、経済産業省認定ITコーディネータなど。
著書に『知恵の素』『速習!シンプルに文章を書く技術』(ともにPHP研究所)などがある。
更新:11月27日 00:05