2012年12月03日 公開
2022年08月24日 更新
すぐ取りかかったほうがいいのに、「面倒だから」「気分が乗らないから」と、つい仕事を「先延ばし」にしてしまう……。
これまでも失敗しているのになかなか直らない習慣。どうすればこの「先延ばしぐせ」を改めることができるのでしょうか。ブラマンテ〔株〕代表取締役の田島弓子氏に聞いてみました。
[写真撮影:長谷川博一,取材構成:笠原崇寛]
※本稿は、『THE21』2012年12月号総力特集「仕事を「すぐやる人」に変わる方法」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
マイクロソフト日本法人に在職中、営業・マーケティング部門で数少ない女性管理職を務め、社長賞を2度受賞した経験をもつ田島弓子氏。
しかし、部長昇進当初は、自身の営業目標のプレッシャーを感じながらマネジメントにも悩まされ、気がつけば仕事が山のように積み上がっていたという。
「いちプレイヤーとして自分の成績を上げることに集中していればよかったときは、仕事を先延ばしをすることはあまりありませんでした。しかし、管理職に昇進するやいなや、それまでとは比べものにならないぐらいの仕事量に。
自分の営業目標の達成、チームの目標の達成、部下のマネジメント、上司や他部署との調整……。中間管理職の4重苦に直面して、仕事は溜まっていくばかり。
そのため、自分の上司からはよく叱られましたし、他部署から協力をボイコットされそうになるなど、つらい状況に陥ることもありました」
優秀なプレイヤーであっても、マネージャーになると他の人との調整が増え、とたんに仕事がコントロールしにくくなる。管理職なら誰もが経験するこのような状況をどう打開し、成果につなげたのだろうか。
「山ほどある仕事を前に、朝、出社すると『何から手をつけよう?』と迷っていました。そこに電話がかかってきたり、部下から相談されたりすると、もう大混乱です。
そこで、毎日帰宅前に次の日の予定を決めてから会社を出るようにしました。スケジュール帳に明日やるべきことをすべて書き出すことを習慣にしたのです。
その際のポイントは、やる順番もある程度決めておくということ。順番まで決めておけば、翌朝、出社したときに迷わず仕事に取りかかることができます。
コツは、まずあまり頭を使わない作業的なものから始めて、脳の作業興奮状態を作り出すこと。そうして、自分の脳のエンジンが温まったところで、頭を使う重要な仕事に取りかかることです。
先延ばしは『やるべきことが具体的にわからない』『どこから手をつけていいかわからない』という迷いから生じますから、迷うスキを与えなければ防ぐことができます。
そのためにも、『営業部のAさんに11時に電話』とか、『部下のBさんに進捗を確認』などといった細かい作業もすべてToDo化しておけば、脳を温めるためのタスクとして有効に活用できるのです。
この習慣が身につけば、やるべきことが明確だから先延ばししない → 迷わないから仕事に集中できる、集中できると仕事が早く片づく、というよいサイクルが回るようになります。
もちろん突発的な仕事が入る場合もありますし、すべて予定どおりにいくとはかぎりません。また、優先順位が低く、今日中にやらなくてもいい仕事はやり残してもいいと思います。
ただ忘れていけないのは、期限を明確にしておくこと。そうすることで、際限ない先延ばしにならないように心がけていましたね」
仕事がたくさんあれば、なかには、「これをやってほんとうに意味があるのだろうか?」と疑問に思うものもあるだろう。こうした「意味を感じられない仕事」は、つい先延ばしにしてしまいがちなのが人情だ。
「私が勤めていたのは外資系企業ですから、ときには海外の本社から日本の市場に合わない指示がくることもありました。
『この製品はテコ入れしても難しいだろう』と思うような仕事にどうしてもモチベーションが上がらず、先延ばしにしてしまったこともあります。しかし、本社からみれば『サボっている』のと同じ。厳しいチェックが入るのです。(笑)
そこで私は、意味がないと思うような仕事でも自分なりの意義を探して、それによってモチベーションを高めることを心がけました。日本の市場には合っていないと思う製品についても、『なぜ合っていないのかの検証』のための仕事と捉えれば、そこに意味を見出すことができます。
どういう点において日本市場に合っていないかを実際にやって報告すれば、それは立派な仕事のフィードバックになるのです。このように、イヤイヤこなすのではなく、自分がこの仕事をする積極的な意味を意識して探すということも、先送りを防ぐための有効な手段の1つになると思います。
また、仕事によっては『専用の場所を用意する』と先延ばし防止に効果的です。たとえば、企画書づくりなどは、自分のデスクにいるとなかなか集中できず、ついほかの仕事に手を出してしまいがち。
しかしそれではどんどん後回しになって、締切りギリギリになってあわててつくることにもなりかねません。
ですから私は、社内の小さな会議室を予約して、そこにこもって企画書をまとめるようにしていました。これなら電話に邪魔されることもありませんし、時間内にかたちにしなくてはなりませんから、自ずと集中力も高まります。自分を追い込む点でも効果的です」
更新:11月25日 00:05