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相手を説得するときに注意すべきことは? 「根拠をバランスよく揃える」話し方

2025年04月27日 公開
2025年04月30日 更新

グロービス,嶋田毅(グロービス経営大学院教員)

説得する方法

「言いたいことを言葉にする」のは容易ではありません。多くのリーダーが以下のような課題を抱えています。

・指示があいまい:わかりづらいから人が思ったように動かない
・考えがまとまらない:要領を得ないから相手に伝わらない
・話の内容がフワっとしている:説得力がないから相手に刺さらない

このような課題を解決するために、数々のビジネスリーダーを育成してきたグロービスが「言いたいことを、瞬時に伝わる言葉に変換する25のトレーニング」を紹介します。本稿は「根拠をバランスよく揃える」レッスンを扱います。

※本稿は、グロービス,嶋田毅著『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

根拠をバランスよく揃える

結論を支える根拠のバランス

■説得力を高める「3つの柱」

何かを主張する際や、他者を説得する際には、その主張や結論を支える根拠がバランスよく揃っている必要があります。図1─2のように、根拠が「柱」のように結論を支えているイメージが理想的です。根拠の数は2〜4つ程度のものがバランスよく揃うと説得力が増します。

たとえば、ある事業に参入する際、次のように言えたら説得力は増します。

「この事業にはぜひ参入すべきです。第一に、市場は今後伸びることが期待できます。第二に、競合は少なく強い企業もいません。第三に、我が社の技術的な強みが十分に活かせます。この事業に参入しない手はありません」

このケースでは3C、すなわちCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、自社(Company)のビジネスフレームワーク(枠組み)を用いています。有名なフレームワークを根拠の柱として用いることができるのであれば、積極的に活用しましょう。

一方で根拠は必ずしも既存のフレームワークである必要はありません。その状況に合わせて考えることが必要です。たとえばプロスポーツの球団が、あるFA選手を獲得するかどうかを考える際には、「今後も期待できそう」「チームの戦力面での弱点を補うことができる」「観客動員にも好影響がある」といった枠組みで根拠を提示できれば説得力は増すでしょう。

それぞれの柱が、(多少感覚的ではありますが)同程度の重みを持つように意識すると説得力は増します。重みの大きい柱から考え、他の柱と比較して重みが大きく違うものがないか、たとえば根拠としての重要度や説得力が他のものと数倍違うものがないかなどを確認すると効果的です。

たとえばこれがもし、「チームの弱点を補うことができる」「去年活躍した」だけでは説得力は落ちます。去年の活躍はまぐれの可能性もあるからです。根拠は、バランスよくレベル感が揃っていて、それぞれが「太い柱」となっていることが好ましいのです。

また、一歩高い視座に立って重要な見落としがないかを確認することも怠らないようにしましょう。

 

演習問題1

■設定

あなたは40歳の課長。29歳の元部下Aさんから、今の仕事を辞め、改めて大学の医学部に入学し、医師になりたい、ついては親にどう話せばいいか相談に乗ってほしいとの依頼を受けました。個人的には彼を応援したいと考えています。さて、Aさんはどのように話せば両親を説得することができるでしょうか。

 

■解説・解答例

[NG例]
-----------------------------------------------
会社を辞めて医学部に行きたいんだ。学力的には大丈夫だし、生涯賃金もそっちのほうが高いからね。
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これでは両親も「それだけで今の会社を辞めるのか」と心配になるかもしれません。「どうしてもその仕事をやりたい」という意志も感じにくいですし、根拠も学力と生涯賃金の2つだけでは、柱としては少し脆弱といっていいでしょう。

そこで、もう少し柱を増やすとともに、それぞれ根拠となる事実を加味して肉付けするといいとアドバイスをしましょう。「仕事のやりがい」「金銭的・学力的にも問題はない」「長い人生を生きるうえで役に立つ」「今の仕事から逃げるわけではない」の4つを柱としています。

特に「仕事のやりがい」と「今の仕事から逃げるわけではない」は、このケースではAさんの親が気にしそうな点ですから、盛り込むことで効果が期待できます。こうしたアドバイスを的確に行うことができれば、信頼度が増し、人脈も広がります。

 

[OK例]
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今の会社を辞めて医学部に入学しようと思っている。
一番の理由は、直接人助けや命を救う仕事に携わりたいと思ったから。子どもの頃に大きな病気を治してもらってからずっとそう思っていたんだ。

お金や学力のことは心配ないよ。貯金は〇〇万円あるし、模試も実は受けていて、国立の医学部でも合格できる見込みもある。合格可能性は80%を超えている。

6年間、さらに学ぶのは大変だけど、先が見えない世の中で、医師免許を取っておくことは、将来に対するリスクヘッジにもなると思う。定年がないので、高齢化社会でもコンスタントに社会貢献しつつ収入が得られるのも大きい。50歳までには、どんなに悪いシナリオを想定しても元が取れる。

最後に、今の仕事が嫌になったからという訳ではないことは理解しておいてほしい。1回きりの人生、やはりやりたい仕事に挑戦してみたいんだ。
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実際にこのくらいの根拠で説得されたら両親も納得されるのではないでしょうか。

 

演習問題2

■設定

あなたは経営者。業績は低迷しており、社内の士気も高くありません。それを打破する方法の1つとして、年功序列的賃金制度を改変し、実績主義の賃金制度に変えたいと思います。どのように説明すれば社員を説得できるでしょうか。

 

■解説・解答例

[NG例]
-----------------------------------------------
我が社の賃金制度を従来の年功序列重視から、実績重視のものへと切り替えたいと考えています。
第一の理由はモチベーションの向上です。特に若手のモチベーションを上げたいと思います。第二の理由は競争力の強化です。皆が自分の業績を伸ばそうとすることで、会社全体の競争力が強化されます。
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言いたいことはわかるものの、「えっそれだけ」「それで効果が出るの?」と思う人もいるでしょう。特にシニア社員の中には不安を感じる人も多いかもしれません。これも柱の数を増やすとともに、なぜ実績重視の施策に効果があると考えたのかを説明することが必要といえそうです。それを意識して改良したのが次です。

 

[OK例]
-----------------------------------------------
今般の事情を鑑み、我が社の賃金制度を従来の年功序列重視から、実績重視のものへと切り替えたいと考えています。
 
第一の理由はモチベーションの向上です。皆さんが感じられている通り、我が社の士気は停滞気味です。結果を残しても報酬への反映が少ないことがその最たる理由であると社内アンケートの結果からもわかっています。
 
第二の理由は公平性の観点です。近年は結果平等よりも機会の平等が強く求められています。また、評価プロセスを透明化し、フィードバックを行うとともに実績に見合ったリターンを与えることが企業業績に寄与することが多くの事例から示されています。
 
第三の理由は会社全体の競争力の強化です。全員が自分の業績を伸ばそうとすることで、会社全体の競争力が強化されます。個人プレーに走る人が出ないように、チームワークなども評価項目に付け加えることを検討しています。
 
すでに高賃金のシニア社員の方には厳しい制度のように映るかもしれませんが、いきなり大幅な賃金カットをするという意味ではありません。
 
3年ほどの時間をかけて段階的に行うつもりです。今はリスキリングの時代ですから、シニアの方も、逆に賃金に見合う結果を残されるように努力されることを期待します。
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4つ目のシニアへの配慮をしっかり説明している点は良いやり方といえるでしょう。段
階的に移行するというのも良いアイデアです。

 

■コツ・注意点

根拠は、可能な限り事実に基づくものや、自明の真理(例:人に危害を加えてはいけない)とすると説得力が増します。

また、意見を根拠として用いる場合は、権威を借りるのも手です。その分野のキーパーソンの複数の意見などを引用すると説得力が増します。

相手にとってのメリットを強調することも必要です。自己中心の発想に陥らないようにしましょう。さらに、あらかじめ相手がどのような疑問を持ちそうか想定しつつ、根拠を揃えると説得力が増します。

 

【グロービス】
グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。

「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。
さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

企業サイト:
グロービス:https://globis.co.jp/
グロービス経営大学院:https://mba.globis.ac.jp/

 

プロフィール

グロービス

グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。

「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。

さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

企業サイト:
グロービス:https://globis.co.jp/
グロービス経営大学院:https://mba.globis.ac.jp/

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