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スピーチがわかりにくい人の特徴とは? プロが教える「話し方上達の秘訣」

2025年04月07日 公開

小倉琳([株]カエカ スピーチトレーナー)

スピーチ

これまでに5000人以上に話し方トレーニングを提供してきたカエカのスピーチトレーナー・小倉氏によれば、効果的なスピーチの鍵は「聞き手に必ず持ち帰ってほしい一文(コアメッセージ)」の設定にあるという。さらに、身振り手振りといった表現力も説得力を大きく左右する。本稿では、小倉氏が伝授する、即実践可能で効果抜群のスピーチ術を紹介する。(取材・構成:坂田博史)

※本稿は、『THE21』2025年4月号特集[できるリーダーは必ずやっている「言語化」]より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

「自分が話す動画を見る」が話し方上達の秘訣

スピーチがわかりにくい、伝わりにくい人たちには、話す一文が長いという共通の特徴があります。

「~なので」「~ですけれども」などの言葉を使って、話を次の言葉につなげると、一文がどんどん長くなってしまいます。聞いているほうは、長くなれば長くなるほど、何が言いたいのかわからなくなります。言葉をつなげたくなってもグッとこらえて、「~です」と一文を区切って話すほうが、聞き手にとっては断然わかりやすいのです。

一文を長くしない。それを意識するだけでもスピーチが大きく変わります。

また、いったん区切ることで「しかし」といった接続詞を使うことができます。「しかし」と言ったら聞き手は話が逆転することを、「だから」と言ったら話がまとめに入ったことを予想できます。話の流れや構成を強調する接続詞を上手に使うことで話がよりわかりやすくなります。

自分の話し方のクセを知るために最も有効なのは、自分が話しているところを撮影し、それを見ること。他人から自分がどう見えているのかを自分が知ることが大切で、そこから話し方のトレーニングが始まると言っても過言ではありません。

自分が話している動画を見て、一文がどれくらい長いかを知る。長く話してしまった文章をいくつかに区切る準備をして、また話す姿を撮影してそれを見る。こうしたトレーニングを繰り返すことでスピーチは確実に上達していきます。

スピーチに抑揚がない、抑揚をつけたくても上手くつけられないという人も多くいるでしょう。スピーチに抑揚をつける方法は4つあります。

1つめが声の大きさ。大きな声で話すときと、小さな声で話すときを使い分けると抑揚がつけられます。

2つめが声のスピード。あまり重要でない内容のときは早く話し、逆に重要な内容のときにはゆっくりと話す。これだけでも、スピーチの印象ががらりと変わります。

3つめが声の高低。ポジティブな内容を話すときは声を高めにし、ネガティブな内容のときは声を低くする。同じ「1億円」と言うのでも、高い声で言えば良い数字に聞こえ、低い声で言えば悪い数字に聞こえます。込められているメッセージの違いが聞き手に伝わります。

声の高低には個人差があり、地声から高い声に変化させるほうがやりやすい人と、低い声に変化させるほうがやりやすい人がいます。実際に声の高低を意識して話し、動画で確認してみてください。

 

「間をとる」だけで圧倒的に伝わりやすくなる

4つめが間のとり方。間を短くすると、テンポよく話を進めることができますが、一方で、話の展開が早くてついていけない、単調なので眠くなるといった聞き手が出てくる可能性もあります。上手に間をとることができると、効果的に聞き手に伝えることができます。

どのくらいの間をとるかは、話の内容や構成によって変わってきますが、基準は2秒。話を区切ったところで、「いち、に」と心の中で数えてから次の話を始めることを意識してみましょう。慣れないうちはこの2秒が長く感じると思いますが、ところどころで2秒の間をとることで、堂々と話している印象になります。

話の段落が変わるときには、2秒以上の間をとります。間を長くとると、沈黙が生まれ、場の雰囲気が変わります。舞台で言えば、幕が変わるイメージです。

長い「間」には、話の転換点を知らせるだけでなく、聞き手に「あれ?」と思わせて目線を上げさせるメリットもあります。これでアテンション(注意)が復活します。

どんなに話が上手い人であっても、1時間聞き手の注意を引きつけ続けるのはムリで、一般的には10分が限界と言われています。

声の大きさ、声のスピード、声の高低、間のとり方、この4つによってスピーチに抑揚をつけることができます。単調になりがちな数字の報告であっても、重要な数字のときには声を大きくし、ゆっくり話すといった工夫で抑揚をつけることができます。ぜひ試してみてください。

ただ、これら4つをいっぺんにマスターしようと思っても、なかなかできません。まずは1つに絞り、実際にやってみて、撮影した動画を見る。すると、ゆっくり話したつもりでも、聞き手の身になると、あまりそう感じないといったことがあります。動画で確認しながら練習を重ね、1つずつ修得していってください。

 

1分間スピーチが基本 手の動かし方も意識する

発声・動作で取り入れたいポイント

スピーチの場で、5分間の予定のところ10分以上話してしまう人もいます。どんなに内容が良いものでも、想定していた時間を超過すると聞き手は集中力を失っていきます。スピーチにおいては、時間の感覚も重要なのです。

トレーニングとしては、まずは「1分間話す」感覚をつかむようにします。実際に1分間話してみると、短く感じる人もいれば、逆に長く感じる人もいます。自分の体内時計が、実際の時間よりも長いのか、短いのか、自覚することが第一歩です。

1分間のスピーチトレーニングを繰り返すと、5分間で話せる内容、10分間で話せる内容がどれくらいなのか見当がつくようになり、与えられた時間に応じたスピーチができるようになります。

では、最後にスピーチの際のジェスチャー、特に手の動かし方についても、簡単に触れておきましょう。

手の動きで意識してほしいことは3つあります。

1つめは、大きく動かすこと。お腹や胸の前で小さく手を動かしても聞き手に何も伝わりません。左右に大きく動かしてはじめて、聞き手の目に留まるのです。

2つめは、動かしたら止める。止めずに動かし続けていると、せわしない印象になってしまいます。メリハリをつけるためにも、動かしたら止めることを意識してください。

3つめは、どのくらいの頻度にするか。話し手のキャラクターにもよるので、どの程度が最適なのか、自分の動画を見て判断しましょう。

「これら3つを意識してスピーチ中に手を動かしてみてください」と言っても、すぐできる人は多くありません。そんな人は、「スライドを描くように」手を動かしてみてください。

例えば、2項対立の内容であれば、右手の手の平にA案が乗っていて、左手の手の平にB案が乗っているようなジェスチャーをします。

あるいは、A段階、B段階、C段階と進んでいく内容のときには、右側のA段階から真ん中のB段階、左側のC段階へと手を動かす。自分の目の前の空間を使ってスライドを見せるイメージです。

スピーチが上達する方法について、色々とご説明しましたが、次の3つのことをやるだけでも、聞き手の印象は大きく変わります。

まず、コアメッセージを決める。
次に、そのコアメッセージをなるべく短くし、何度かスピーチの中に入れる。
そして、一度話す練習をして、動画を撮影して見返す。

これだけで「何が言いたかったのか、わからなかった」という事態は避けられます。聞き手の心に火をつけるスピーカーを目指して、内容と話し方を少しずつレベルアップさせていってください。

 

著者紹介

小倉琳(おぐら・りん)

(株)カエカ スピーチトレーナー

2020年、(株)カエカ入社。スティーブ・ジョブズに魅せられたことをきっかけに、人を熱狂させるプレゼンテーションのメカニズムに関心を持つ。これまでにTED Talksを含むプレゼンテーション動画を延べ1,000件以上視聴・分析し、聴衆を巻き込む言葉を日々模索。プレゼンテーション、スピーチの豊富な知見を活かして、政治家、経営者、学生など幅広く話し方トレーニングを提供。株式会社カエカ(https://kaeka.jp/?utm_source=php&utm_medium=referral&utm_campaign=leaderspeech)

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