2021年06月09日 公開
2023年02月21日 更新
アスリートが実力を発揮するためには、フィジカルだけでなくメンタルも大切なことはよく知られている。ビジネスパーソンがアスリート達のような集中力を保ち、成果を出すためにはどうしたら良いのか。
自身も元五輪メダリストで、現在はトップアスリートにメンタルトレーニングの指導を行なっている田中ウルヴェ京氏にうかがった。(取材・構成:前田はるみ)
ビジネスパーソンとの心理コンサルティングにおいても、「集中力を身につけたい」と相談を受けますが、よくよくうかがうと、必要なのは集中ではなく「やる気の整理」であるケースは多いです。
例えば、私たちは好きで楽しいことをやっているときに、「もっと集中しないと」とは思いません。ずっとやりたいと思っていた好きな仕事なら、意識しなくても集中できるでしょう。
しかし仕事においては当然やりたくないこともあります。「やりたくないことでも好きになる努力を」と考える人もいるかもしれませんが、私はできません。私だったら、好きでないものを「好きになろう」と思うだけで、ストレスになってしまいます。
しかしその仕事が嫌いでも、集中することはできます。そのための解決策は、自分なりの目的を明確にすることです。「嫌いな仕事には違いないけれど、これを成し遂げたらどんな価値が得られるのか?」と自問してみてください。
価値とは、例えば自信がつく、学びになる、達成感を得られる、信頼を得られる、といったことです。あるいはお金のため、見栄のため、でもいいと思います。
目的が明確になったら、その仕事に必要な集中とは何かを考えてみるのです。
例えば、プレゼンするのに必要な集中、お客様と一対一で面談するのに必要な集中、資料作成に必要な集中は、それぞれ違うはずです。タスクごとに適した注意配分を自分で設定し、イメージしておくとよいでしょう。
私は今、博士論文を執筆していますが、正直なところ、やる気のエネルギーがほとんどありません(笑)。でも、取り組む価値があると思うから、取り組んでいます。
そんな私が集中するために実践しているのが、4つの習慣です。
かいつまんで紹介すると、「パフォーマンス目標」としては、毎日2ページ書く、毎日新しい論文を1本読むなど、具体的な目標を設定しています。
「プレパフォーマンスルーティン」として大事にしているのは、5時間以上の睡眠と、朝に身体を動かすことです。
集中を妨げるものも、事前に排除しておきます。私の場合、書斎から一歩でも出ると他のことに気が散ってしまうので、必要なものをデスクまわりに用意しておきます。
ビタミン入りの水や、気分転換のためのマッサージ器具は必須ですし、宅配便の受け取りをしなくていいように、置き配の設定もしておきます。
集中のための環境設定は人それぞれあると思いますので、自分に合ったルーティンを見つけてみてはいかがでしょうか。
更新:12月04日 00:05