2025年02月12日 公開

キャリアシフトには興味があるものの、転職や起業には踏み出せない......そんな人におすすめなのが「複業」だ。45歳からの実践型複業スクール「ライフシフトラボ」で、数多くのミドルの複業デビューを支援している都築辰弥氏に、その具体的な方法論を取材した。(取材・構成:川端隆人)
※本稿は、『THE21』2024年3月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
私たちが推奨するのは、副業ではなく「複業」です。単なる「サブの収入源」としてではなく、本業に並ぶ「第二のキャリア」として経験や実績を積み上げてほしい、という思いを込めてこの字を当てています。
特に、40代から50代のミドル世代の方には、このスタンスは非常におすすめ。中でも「今のキャリアのままでは生涯安泰とはいかないのでは」という危機感をお持ちの方にはうってつけと言えます。理由は大きく分けて二つあります。
一つは、この世代は転職や起業でリスクを取りにくいこと。ちょうど子どもの教育費がかさみやすい時期で、持ち家の方ならローンもまだまだ残っているでしょう。そう簡単に、本業についての重要な決断をくだすことはできません。
ですが複業なら、もしうまく事が運ばなくても、それは本業の評価には無関係。今の会社に勤めたままで、別のキャリアを模索・形成できるのですから、挑戦しない手はありません。
そしてもう一つの理由は、それをそのまま「セカンドキャリア」につなげられるかもしれない、ということ。現役のうちから、安定的に「退職後」に向けた準備ができるのです。
もちろん、複業の分だけ収入を増やせるという「副業」のメリットも享受できます。今後、役職定年や定年再雇用のタイミングで給与水準が下がることを踏まえると、今のうちから別の「稼ぎの柱」を持っておくことは、想像以上に大きな安心をもたらしてくれるでしょう。

当社への相談を機に複業を始めた方がよくおっしゃるのは、複業のもたらす充実感です。
長年の経験の賜物か、日常の仕事はさほど頭を使わなくてもこなせてしまう。主な仕事は部下の労務管理と書類チェック、決裁作業......そんな方も決して少なくはないでしょう。
そんなときに複業を始めたことで、「久々に仕事の最前線で、いい汗をかけた」と楽しそうに話す方が大勢いらっしゃるのです。企業では得にくい「自分の手で稼いでいる」というやりがいを得られることも、複業を推奨する理由の一つと言えます。
他にも、ある方は「複業先で一定の収入があれば、面白い仕事ができるベンチャー企業への移籍など、給料が目減りするような転職にも挑みやすい」と話されていました。
本業では実現が難しい希望を、もう一つの仕事で追求する──そんな働き方が可能になるのです。投資の際にポートフォリオを組むように、キャリアについても「一社に全振り」ではなく分散させる。そうすることで、安定とやりがいの両立といったことも実現しやすくなるでしょう。

では、そんな「成功できる複業」を見つけるには、具体的にどうすればいいか。
まず、複業における「成功」の意味は、人によって異なります。とにかく収入を増やしたいのか、やりがいや仕事の面白さが欲しいのかなど、自分が複業に何を求めているのかを、複業の「ステップ0」としてまず考えてみてください。
そのうえで「ステップ1」となるのが、自分の強みをしっかり棚卸しすること。冷蔵庫を開けてどんな食材が入っているか確認するように、これまでのキャリアや趣味の遍歴など、すべての材料を徹底的に棚卸ししてください。
それが終われば、次にそれらの「材料」からどんな料理、すなわち「仕事」が生まれるかを考えます。この段階が「ステップ2」というわけです。
実はこのステップ2こそ、多くの人がつまずくポイント。重要なのは、冷蔵庫に何があるか確認することではなく、そこから「カレーが作れるな」とか「肉を買い足せればベターだ」といった回答を導き出すことです。
無用な回り道を避けるには、棚卸しをしただけで終わらず、その中から「何が複業のための武器になるか」「どうしたら仕事として成立するか」を見抜く力を持つことが欠かせません。
そのために必ずすべきなのが、マーケットの確認。ココナラのような「スキルシェア」の仲介サービスを覗き、どんなスキルやサービスにニーズがあるのか(=売れているのか)を見てみましょう。
同様の理由から、書店の「ビジネス書の棚」を眺めるのも有効です。どんなビジネススキルが求められているかが感覚的にわかりますし、ジャンルごとの棚面積を比べることで、分野ごとの需要の大きさをざっくり測ることもできます。

また、経験をビジネス化するレシピには、5つの決まったパターン(=代行業、顧問業、講師業、情報発信業、幹事業)があることも押さえておきましょう。詳しくは上図もご参照ください。ご自身のスキルや経験、趣味をここに当てはめてみるだけでも、様々な可能性が見えてくることと思います。

当社の受講生で実際に複業に成功している例を紹介しましょう。典型的な事例で言えば、「会社でずっと人事の仕事をやってきた方が、複業として人事のコンサルタントとして開業する」、こうしたものはわかりやすいと思います。
面白い組み合わせの例としては、キャリアコンサルタントの資格を持ちつつ、趣味が「タロットカード」という方がいます。資格を愛好者の多い「タロット占い」と組み合わせることで、大きくニーズを高めることに成功し、多くの顧客を獲得されました。この方は、当社の卒業生の中でも有数の収益を上げています。
他には、趣味で収集していたボードゲームを活用しての研修講師業が評判を呼び、本業の会社から「うちでもやって」と言われて自社の研修も担当するようになった、という方もいらっしゃいました。
中でも特に印象的だったのは、「自分は営業ひと筋、30年も続けてきたけど、その内実は泥臭いだけの『昭和式』の営業術。もう通用しませんよね......」と悲観されていた方の例。ご自身では「武器にならない」とおっしゃっていましたが、それこそがその方の強みだったのです。
実は今、若い起業家たちが興したスタートアップにとって、大企業の上層部にアプローチするための「昭和式の営業術」は、喉から手が出るほど学びたいものの一つ。この方はそのギャップを逆手に取り、スタートアップに特化した営業コンサルを複業にして大成功されました。
このように、読者の方々が経験してこられたことの中には、今後の武器になるものが必ず隠れているものなのです。
ビジネス化の道筋が見えてきたとして、気になるのは「一般人の複業に顧客が集まるのか」ということですよね。
ですが、前提として大事なのが「複業に失敗はない」ということ。仮にまったく集客できなかったとしても、失うものはありません。単に「このやり方だとビジネスにならない」という知見が得られるだけのこと。失敗がない以上、気軽にできることからどんどん試し続け、PDCAを何度も回していくのがベストです。
具体的な集客術としては、ココナラなどのスキルシェアサービスへの「出品」が第一歩になるでしょう。正直に言えば競合が多く、それだけで「大成功」は難しいのですが、まずは「売れれば万歳、売れなければ別のやり方」と割り切り、とにかく始めることが先決です。
SNSを使って自分で広報・集客したり、顧客に新規のお客さんを連れてきてもらったりといった「事業を本格化させるステップ」に進むのは、ある程度経験を積んで「売れ線」がわかってからで十分と言えます。
また、複業に取り組むうえでは「仲間」の存在も大切です。会社の中で複業について話せる人を見つけるのは難しいもの。活動を始めたら、それと並行して社外の副業/複業コミュニティに属し、わかり合える仲間を探すことをおすすめします。
【都築辰弥(つづき・たつや)】
1993年生まれ。東京大学工学部卒。在学中は世界最大級の学生NPOアイセックで活動し、バックパッカーとして世界一周も経験。新卒でソニー(株)に入社し、スマートフォンの企画担当者として「Xperia 1」などをプロデュースする。2019年、(株)ブルーブレイズ(現・(株)ライフシフトラボ)を創業し独立。22年からは45歳からの実践型キャリアスクール「ライフシフトラボ」を展開し、中高年からのキャリア形成事業に取り組んでいる。
更新:03月03日 00:05