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血糖値の急上昇が「脳の働きを鈍らせる」 簡単にできる低GI食の3つのポイント

2024年12月10日 公開

西剛志(脳科学者)

低GI食

糖質を摂り過ぎると、血糖値が急激に上がったり下がったりする「血糖値スパイク」が起こる。この状態になると脳がエネルギー不足になり、集中力や記憶力が低下するなどの悪影響を引き起こすのだ。脳科学者の西剛志氏は、血糖値をゆっくりと上げて、脳に安定してエネルギーを供給する「低GI食」を摂ることが大切だと語る。(取材・構成:塚田有香)

※本稿は、『THE21』2024年12月号特集「「脳」と「心」のトリセツ」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

ご飯に納豆をかければGI値が下がる

食品のGI値については、インターネット上でも様々な研究機関や企業が一覧表や比較表を公開していますが、食事のたびに検索してどれが低GI食かを確認するのは面倒に思う人も多いでしょう。そこでGI値が高い食品と低い食品を見分けるポイントを3つ紹介します。

①甘すぎるものは要注意
②炭水化物は白い食べ物より黒い食べ物を選ぶ
③食物繊維が多いものを選ぶ

まずはこの3つを意識することから始めましょう。口に残る甘さのほとんどはブドウ糖に由来するため、砂糖を多く含む食品はなるべく避けます。「白い食べ物より黒い食べ物」とは、白米より玄米、白い食パンより茶色のライ麦パンや全粒粉パン、うどんより蕎麦を選ぶということ。精製されていない、色がついた炭水化物は、糖の吸収を穏やかにする食物繊維を多く含むため、血糖値の上昇が緩やかになります。3つめも同じ理由です。

加えて肉や魚、乳製品も、糖質がそれほど含まれない低GI食であることを頭に入れておくといいでしょう。例えばピザは健康に悪そうなイメージがあるかもしれませんが、低GI食である乳製品のチーズと食物繊維が多い野菜を具材に使ったものなら、GI値は低めです。

また単独ではGI値が高い炭水化物も、組み合わせを工夫することで低Gi食に変えられます。白いご飯は高GI食ですが、食物繊維を多く含む納豆をかけるとGI値が有意に下がります。

食べる順番によってもGI値を抑えることが可能で、野菜スティックを食べてからうどんを食べるなど、最初に野菜を食べる「ベジファースト」によって血糖値スパイクを防げることがわかっています。あるいは肉や魚を炭水化物より前に食べるだけでも、血糖値の急上昇を抑えられます。

一方、脳にいいからといって、低GI食しか口にしないとか、毎日ずっと続けなければいけないと考える必要はありません。我慢ばかりだとストレスが溜まり、脳にとって逆効果です。ストレスは脳の老化を促進することが研究で明らかになっていて、低GI食を実践しても効果が相殺されてしまいます。

どうしても白いご飯やうどんが食べたいときは、先ほど紹介したような工夫をして、好きなものを楽しみながらGI値を下げるといいでしょう。また自分へのご褒美として、週に何度か高GI食の日を決めておくのもいいと思います。大事な仕事がある日や集中力を高めたい場面など、ここぞというときに脳が最大限のパフォーマンスを発揮できるように、低GI食は無理なく上手に取り入れることが大切です。

 

脳にとって理想の朝食は 「タンパク質+炭水化物」

脳のパフォーマンスを高めるお勧め朝食メニュー

低GI食をより効果的に取り入れるなら、朝食に何を食べるかがとても重要です。先ほど夕食に高GI食を摂ると翌日の仕事の効率が下がると述べましたが、実は朝食の内容も次の日のパフォーマンスを左右します。その理由は、朝食が夜の睡眠に大きく関わっているからです。

朝食で、タンパク質に含まれるトリプトファンというアミノ酸を摂ると、脳内でセロトニンという物質が作られます。セロトニンは夜になると「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンに変化し、体温が下がってぐっすり眠れます。すると脳が休息して翌日に備えられるので、次の朝から脳が元気に働くのです。

ただしトリプトファンは糖質を同時に摂らないと脳に届かず、セロトニンも分泌されないので、朝食では肉や魚、乳製品や大豆製品などのタンパク質と炭水化物を一緒に摂るのがポイントです。玄米ご飯に焼き魚や卵焼き、味噌汁、納豆などを組み合わせた昔ながらの和食は理想的ですし、洋食なら全粒粉のパンやオートミールを牛乳やヨーグルトと一緒に摂るといいでしょう。

これはちょっとした裏技になりますが、朝食に牛乳を1杯飲むと、その日は何を食べても低GI食になります。これは乳製品に含まれるカゼインというタンパク質が腸内に膜を張り、糖質の吸収を抑えてくれるためです。その効果は1日中続くので、昼や夜に高GI食を摂っても血糖値が上がりにくくなります。朝にコーヒーを飲むときも、牛乳を加えることで同じ効果が得られます。

 

夜まで頑張りたいときは夕方に間食を摂る

高カカオチョコレートで期待できる様々な効果

昼食から夕食までは時間が空くことが多いので、夕方頃になると空腹で集中力が切れてしまう人もいるでしょう。そんなときは積極的に間食を摂り、脳にエネルギーを補充してください。

間食も健康によくないイメージがあるかもしれませんが、脳科学的に見るとむしろ大きなメリットがあります。時間栄養学の第一人者である早稲田大学の柴田重信教授が行なった実験によると、「①間食を摂らない」「②ようかんを17時半頃に食べる」「③ようかんを夕食後に食べる」の3グループを比較したところ、②だけが血糖値が抑えられるという結果になりました。

これは食物繊維の多い豆類を原料とするようかんを夕食前に摂ったことによる効果と考えられます。なお、①は夕食時に一気に血糖値が上がり、③は夕食後さらに血糖値が上がって、その状態が就寝前まで続きました。

よって空腹を我慢せずに間食を摂れば、夕方以降も集中力が持続して仕事が捗ると同時に、夕食後に血糖値スパイクを引き起こす心配もなくなります。間食は大豆の焼き菓子やナッツ類、みかんなど、食物繊維が豊富な低GI食を選んでください。

中でもお勧めは高カカオチョコレート。カカオポリフェノールを多く含むチョコレートを食べると、脳の活発な働きを支えるBDNFという物質が増えることが実験で確認されており、集中力や記憶力を改善させる効果が期待できます。 皆さんもうまく低GI食を取り入れて、仕事のパフォーマンスをアップさせてください。

 

著者紹介

西剛志(にし・たけゆき)

脳科学者

東京工業大学大学院生命情報専攻卒。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで3万人以上に講演会を提供。テレビやメディアなどにも多数出演。近著に『脳科学者が考案 見るだけで自然に脳が鍛えられる35のすごい写真』( アスコム)がある。

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2025年1月

THE21 2025年1月

発売日:2024年12月06日
価格(税込):780円

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