2012年09月04日 公開
2022年12月26日 更新
さて、入社当時から一貫して、私は外食の仕事を希望していました。いずれは外食系のグループ会社に出向したいという思いがあったのです。
それを実現するには、さらなる学びが必要でした。法人営業で痛感した知識不足を克服するためにも、2008年からビジネススクールに通い、翌年には大学院に通って勉強しました。
そこで触れた数々の図書を通して、「経営者」のなんたるかを学びました。なかでも「宅急便」の生みの親である小倉昌男氏の『経営はロマンだ! 』は印象深いものです。同時期に私自身がサブウェイ取締役となったこともあり、心に残っています。
『ビジョナリー・カンパニー(2)』もそのころ熱心に読んだ本です。シリーズ中、2がとくに印象的だった理由は、事例の多くがサブウェイと共通していたからです。急速に店舗数を増やして成長期にあるサブウェイを束ねるにあたり、企業の飛躍期のありようを説くこの本から得たヒントは多くあります。
とくに心強かったのは、「リーダーはカリスマである必要はない」というメッセージ。天才的能力を発揮するより、地道な積み重ねによって次代へと持続する企業体質をつくることが大事だという話は、「天才でなくともリーダーになれる」という励ましを与えてくれます。
『正しく決める力』も、リーダーのあり方を考えるのに最適です。何が重要で、何が重要でないかをつねに問う姿勢が学べます。社員をまとめるとき、自分の仕事の効率性に疑問をもったとき、この本に立ち返るようにしています。
いま「まとめる」と述べましたが、これには工夫と努力が要ります。サブウェイで働く社員、大勢のアルバイト、ステークホルダー ――立場の違いを超えた共通言語をもつ方法も、私にとって重要なテーマです。そこでわれわれは、「ブランドブック」と銘打ったイラスト入りの小冊子を配り、理念の共有を図っています。
『ストーリーとしての競争戦略』は、そうした試みの重要性を裏付けてくれる本でした。戦略の本といえば通常、フレームワークによる分析法などを説いたものがほとんどですが、この本は「よい戦略はすべて、流れをもったストーリーとして組み立てられている」と語ります。
ビジョンの実現に向けてワクワクするストーリーを共に体験することが大事だ、と。以来、折に触れ「その戦略はストーリーに乗っているか?」を自問するようになりました。
さまざまな本を読んできましたが、いずれも自分がその立場になって初めてリアルに響くものだと実感します。『ビジョナリー・カンパニー』などは、20代に読んでいたら理解できなかったことでしょう。
しかし一方で、「わからなくとも読む」ことも大事。働く人はぜひ、「読む経験」そのものを積んでほしいですね。インプット力を鍛えられ、成長が促されます。のちに再びその本を手に取り、理解できるようになった自分を発見するのも嬉しいものです。
読書が必要だとわかっていても、忙しくてつい後回しになることもあるでしょう。そんなときは、読書仲間をつくるのがお勧め。私はビジネススクール時代の仲間と、定期的に「輪読会」を開いています。
テーマにする本を決めて章を分担し、会の日までにレジュメをつくるという形式です。感じたことを伝え合えば頭の中も整理できます。ぜひ多くの本に触れ、働くうえでの糧としてほしいですね。
【PROFILE】庵原リサ 日本サブウェイ〔株〕取締役 マーケティング本部長
1969年、東京都出身。91年に上智大学を卒業後、サントリー〔株〕に入社、ほどなく同社初の女性営業職となる。次いで商品開発、法人対象の企画部門、法人営業を経験したのち、2010年より同社系列の日本サブウェイ〔株〕に出向、取締役に就任。
更新:11月22日 00:05