1,000人以上の経営者の伴走者として知られる起業家の徳谷智史氏。同氏がポッドキャストで語った経営の実態と醍醐味をまとめた初の著書『経営中毒 社長はつらい、だから楽しい』が、PHP研究所から2月に発売され、ビジネス書の聖地・丸善丸の内本店で2カ月連続の総合ランキング第1位を獲得するなど大きな話題を呼んでいる。
近年、音声コンテンツ「ポッドキャスト」の人気番組が相次いで書籍化されているが、その背景にはリスナーの「視覚化したい」というニーズの高まりがあるという。Podcast Studio Chronicleの代表で音声プロデューサーの野村高文氏は、「ポッドキャストは会話のライブ感が醍醐味だが、内容を記憶するのは難しい。会話を視覚的に理解し、手元に残したいというリスナーが増えている」と分析する。
そんな中で2月に発売された徳谷智史氏の著書『経営中毒』は、同氏がメインMCを務める人気ポッドキャスト番組の内容を書籍化したもの。番組は「JAPAN PODCAST AWARDS」のベストナレッジ賞を受賞しており、スタートアップ業界人の注目度は非常に高い。
徳谷氏は、自身も起業家として数々の苦難を味わい、1,000人以上の経営者の伴走者として、その苦悩を間近で見てきた人物だ。書籍版では、放送では語られなかったエピソードを加筆し、経営者が直面する資金繰りや人事、組織運営などの悩みを赤裸々に綴っている。
「ビジネス書の聖地」とも称される丸善丸の内本店では、2024年本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りに行く』を抑え、2カ月連続で総合ランキング第1位を獲得。発売から3カ月で5度の重版を重ね、2万部を突破するなど、ビジネス街の書店を中心に好調なセールスが続いている。
PHP研究所は、同書の人気の理由について、「経営者はもちろん、マネージャークラスでも直面し得る具体例を盛り込み、著者がどう切り抜けたかを生々しく再現している点が支持されている」と分析する。 トップの孤独と、会社員視点では得難い「やりがい」「充実感」を明かした内容は、まさに「社長はつらい、だから楽しい」という経営の中毒性と醍醐味を疑似体験できるリアルさがあるようだ。
徳谷氏は、「『いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る』ために起業した」と語り、企業向けには大手からスタートアップまで1000社超の変革コンサルティングを手掛けている。個人向けにも、2万人を超えるビジネスパーソンのキャリア支援に携わるなど、精力的に活動中だ。
音声プロデューサーの野村氏は、「ポッドキャストで徳谷氏の人柄に触れ、魅力を感じたリスナーが、その内面をさらに深く理解したり、日々の生活の中でいつでも参照できるように書籍を購入しているケースが多い」と指摘。「ポッドキャストと書籍は補完関係にあり、人気番組が書籍化されていく事例は今後も増えるだろう」と展望を語った。
更新:09月14日 00:05