――お二人とも米国の事情にも詳しいと思います。生成AIをビジネスに取り入れる動きには、日米で差がありますか?
【ジェリー】大きな差があると思います。
【山本】ありますね。米国ではハッカソン(開発者が集まって短期間で集中的に開発を行なうイベント)も頻繁に開催されていますし、生成AIを取り込んだ新しいサービスもどんどん出てきています。投資家も起業家もプログラマーもフィーバーしている状況です。
例えば、今年3月にはセールスフォースが生成AI専用の2億5000万ドルもの投資ファンドを設立しました。マイクロソフトも今年1月、OpenAIに2019年以来3度目の投資をしました。その額は最大100億ドルとも言われています。
スタートアップも次々と生まれていて、サンフランシスコにはそれらが集積する「セレブラル(大脳)バレー」と呼ばれる場所までできています。
それに比べると、日本は人数も金額も小規模です。
――日本企業の動きが遅いのは、体質でしょうか?
【山本】どうでしょうか。ただ、5カ年計画などの中期経営計画に書いていないことは、いきなりできないということはあるかもしれません。どの部署が担当するのか、予算はどうするのかという話になりますから。オーナー企業なら別ですが。
米国企業の場合は、収益が下がると株主に突如アクティビストファンドが登場して、プレッシャーをかけられるという事情もあります。その意味では、危機感の差が行動のスピードの差につながっていると思います。
日本には、理系出身で英語もわかり、ビジネスもわかるベンチャー投資家は少なく、意義のある生成AIへの投資も限定的です。
――「生成AIによって人間の仕事が奪われる」と言う人もいます。この見方については、どう思いますか?
【ジェリー】AIをうまく活用できる人が、できない人よりも、労働市場において有利になるのだと思います。インターネットを使える人のほうが、使えない人よりも、労働市場において有利なのと同じです。
他の人がAIを使っているのに、自分はAIを使わないと、自分の仕事力が他の人よりも劣ることになるでしょう。
AIを使えば効率もクリエイティビティも上がります。AIを使うことで、例えばゲーム業界もアニメ業界も、もっともっと成長できるはずです。
【山本】昔で言うと、エクセルでマクロを組んで仕事を自動化したら、「ズルい」と言われて叱られた、というような話ですね。AIを使うことで空いた時間を、より生産的なことに使えばいいだけなのですが。
新しいものはこれからもどんどん出てきます。それらを、論理的な根拠がないのに、精神的に拒否しても、何も始まりません。受け入れて、使いこなしたほうが有利になります。
更新:11月21日 00:05