2023年03月06日 公開
2023年07月20日 更新
「お客様に"売りたくありません"と言うこともあります」と話すのは、(株)クレド執行役員の寺地央氏。売上よりも「お客様の未来」を本気で考えた結果、「今は買わないほうがいい」とアドバイスすることもあるという。
不動産会社でありながら、時には不動産よりもNISAを勧めるなど、徹底的に顧客に寄り添ったコンサルティングを行なうクレドが大切にしている姿勢をうかがった。(取材・構成:川端隆人、写真撮影:まるやゆういち)
――都内の中古ワンルームマンションを中心に販売されてきたクレドですが、最近は扱う物件の幅を広げているそうですね。
【寺地】当社の理念は「すべては、お客様の未来のために。」です。「こうなりたい」という未来像は、お客様それぞれに違います。ニーズに合わせたご提案ができるようにシフトしていこう、という動きですね。
都内のワンルームを中心としつつ、大阪や福岡の物件にも手を広げています。昨年は特に、福岡が多かったですね。
都内の物件は価格も高くなってきていますし、どうやら今後は金利も上がっていきそう...となると、なかなか手を出しづらい方も出てくると思います。一方で、最近では、1棟の物件のニーズもあるので、専門の部署も立ち上げました。
ただ、手を広げるからこそ、物件は厳選します。立地はもちろんですが、仕入れる際のチェック項目が100ほどあって、すべてをクリアした物件しか買いません。
当社は大規模な広告を打つことはなく、紹介がほとんど。紹介してくださるお客様の顔をつぶすわけにはいきませんから、いい物件しか売れないんです。
――売った後も、お客様と密な連絡を取られるとか。
【寺地】年数回は必ず連絡を取りますし、食事をご一緒したり、交流会なども随時実施しています。週末にお客様と社員で集まってサバイバルゲームで遊ぶこともあります(笑)。
コンスタントにお会いするようにしていると、「今度、結婚するんですよ」「保険のことでちょっと悩んでいて」といったお話が自然に出ます。そこで、ライフステージに合わせたアドバイスができるわけです。
当社はノルマのような縛りがなく、のびのびと働ける環境なせいか、離職率も低いです。それもあって、担当者が長くお客様とおつき合いできるのも強みです。
――不動産の営業という枠を超えたおつき合いをされていますね。
【寺地】お客様の未来をトータルにお手伝いするのが我々の仕事ですから。不動産投資だけをお勧めするばかりではないんです。ファイナンシャル・プランナーの資格を持っている社員が多いので、家計の見直しからアドバイスさせてもらっていますし、「不動産が合わないようなら、太陽光発電はどうですか?」「マンションを買う前に、まずはNISAじゃないですか?」といったアドバイスをすることだって普通にあります。
「どうにかしてローンを通して買わせよう」というやり方をしている会社もありますが、当社では年収や資産から見て、一般的なリスクに耐えられないと判断したお客様には絶対にお勧めしません。お客様のために「今の段階では売りたくないです」とはっきりお伝えします。
1件購入して、さらにもう1件購入できる余力があるお客様でも、「今後マイホームの購入をお考えなら、ローンが組めなくなるリスクがあるので、ここでやめておきましょう」と言うことも。
お子さんがいる場合には「塾代がかなりかかりますよ。残しておいたほうがいいんじゃないですか? 実はうちの子もそうなんですが、大変ですよ」なんてお話をしたり(笑)。
お客様の近くで、未来のために本気のアドバイスをする。それが信用につながるんです。
――購入後の管理でも、独自のサービスを導入されていますよね。
【寺地】物件の設備が壊れたときには修理費がかかります。当社にはあんしん設備保証という制度があって、毎月1000円のご負担で10年間、給湯器、エアコン、浴室乾燥機、キッチン周りの交換修理を10万円まで保証します。おそらく他社にはない制度で、これはぜひお勧めしたいですね。高い広告費をかけていないからこそできるサービスです。
賃貸管理も集金代行、空室保証、家賃保証の3プランを用意しておりますが、お勧めは集金代行契約ですね。空室を出さないために、うちは「足でも稼ぐ」ようにしているんです。
――えっ、それはどういうことですか?
【寺地】お客様の物件の近くにある不動産屋さんを自分たちで地道に回って、名刺交換をして直接お願いをする。地方の物件で訪問が難しい場合でも、必ず現地の不動産屋さんと密に連絡をとります。サイトで募集するだけ、というやり方とは入居率がまるで変わりますよ。
また、退去予告を通常の1カ月前ではなく、2カ月前にしてもらう契約にすることで、募集を早めに始められるようにもしています。
一方で、当社ではオーナー様専用のアプリを導入しているので、故障などの対応もチャットでスピーディーに行なえます。それが入居者様の満足度向上にもつながっています。
――不動産投資で成功するために、一つアドバイスをするとしたら、どんなことでしょう。
【寺地】残念な結果になってしまう方というのは、不動産業者のいいなりで買っていることが多いんです。「この物件、恵比寿ですし、このくらいの家賃が見込めますよ」などと言われて、鵜呑みにしてしまうんですね。
マイホームを買うときは、業者や物件を厳選しますよね。家を借りるときだって、いろんな物件を見て回るでしょう? なのに、なぜか投資用不動産だと、営業の言いなりになってしまう方が多い。
私がお客様によく言うのは、「私はこう言っていますが、嘘をついているかもしれませんよ」「本当かどうか、ご自身で確かめてくださいね」ということ。信用してください、ではないんです。むしろ「1件目を買うときは信用しないでください」と言います(笑)。
あとは、お勧めするだけではなく「こういう理由で、お客様には合わないと思いますが...」という物件もあえてご紹介して、お客様の視野を広げていただくようにもしています。
――顧客が自分で学んで、判断できるように導くわけですね。そこまで誠実に向き合える原動力は何なのでしょう?
【寺地】私もそうですが、当社の営業は不動産業界の中で色々な経験をしてきています。「本当にこれでいいのかな?」「お客様のためになっているんだろうか?」、そんな疑問を感じ続けて、「やっぱりお客様とちゃんとつながれる仕事をしたい」と思ってクレドにたどりついた。
だから、顧客の不利益になることは絶対にしたくないんです。3000万円の物件で、「退職金で完済を」と考えているお客様がいたら「ダメです、奥さんに怒られますよ!」と止めます(笑)。そして「退職金は使わない方向で考えましょう」と別の投資をお勧めする。それが当社のやり方なんです。
だから、クレームなど起きないですし、お客様がお客様を連れてきてくださる。そしてより多くのお客様の理想の未来をお手伝いできる。最高の仕事をさせてもらっていると思いますよ。
【寺地央(てらち・あきら)】
1984年、神奈川県生まれ。2018年12月に(株)クレドに入社。20年、営業本部長に就任。新築ワンルーム販売会社、賃貸仲介、一棟アパート、リノベーションなど様々な物件を取り扱ってきた豊富な経験を武器に、様々な視点から不動産投資のアドバイスを行なっている。「自分が良いと思った物件以外は勧めない」というモットーを掲げ、信頼を得ている。
更新:11月22日 00:05